鳥栖のエース、豊田陽平に聞く「妻の出産と30代からのストライカー」 (4ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 田村翔/アフロスポーツ●写真

 同時に、「自分もこうして生まれてきたんだな」と彼は思いを巡らせた。豊田が産まれたとき、4000グラムと人並み外れて大きかった。出産前は、「母子共に無事かは分からない」という難産だったというのだ。

「妻にも母にも感謝しましたね」と彼は低い声で言う。

「第一子は里帰り出産だったので、新生児を見たのは初めてだったんですよ。今は家にいるんで、めっちゃかわいいです。とにかくちっちゃくて。帰宅すると、すぐに手を消毒して抱っこしたくなりますね。見ているだけで自分の気持ちが癒されるというか。寝てるのを抱っこすると起こしちゃうんで、一応妻に聞くんですが、『今、寝たんやから』と叱られています(笑)」

 来シーズン、彼は生まれ変わるような気持ちで挑むのだろう。得点感覚は研ぎ澄まされているのは間違いない。過去4シーズンのトータルスコアで彼より得点したJリーガーは一人もいないのだ。

 Jリーグ最高のゴールゲッターは己(おのれ)の矜持を懸けて勝負する。

「自分のゴールは、“これは誰でも決められるよ”と思われがちなのかもしれません」

 彼は淡々とした口調で説明した。

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