鳥栖のエース、豊田陽平に聞く「妻の出産と30代からのストライカー」 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 田村翔/アフロスポーツ●写真

 豊田は言葉を慎重に選びながら、彼らしい比喩を用いた。それは批判や愚痴ではなく、苦悶であり、自戒だったのだろう。事実、シーズン中の彼は脇目もふらず邁進(まいしん)し続けていた。そもそも、彼は変化に挑むことを否定していない。むしろ、停滞は後退を意味するというのが彼の哲学であり、彼自身が「進化するためには、挑戦を避けては通れない」と腹を括(くく)っていた。

「個人的にも、“変える勇気を持ちたい”とは思っているんですよ」と豊田は付け加える。

「なぜなら、自分の体質も変わっているわけですから。同じことをして、いつまでもなにも変えない、というのはプロの世界はあり得ません。もちろん、今までやってきたリズムで成績や結果を残してきたし、それなりの矜持(きょうじ)も持っています。だから正直、変えるのは怖いですよ。でも進化を恐れるべきではない。ポジティブに考えて動くべきだと思っています」

 今年10月には、第二子が誕生。初めて出産に立ち会い、生命力の強さを感じた。産みの苦しみというのか、妻は思った以上に大変そうに見えてしまい、不思議と泣きたい気持ちになったという。妻に声をかけるタイミングが分からない大男は、腕がつりそうになるまで、うちわを扇ぎ続けた。そうやって子どもが産声を上げたとき、自然と妻に感謝することができたという。

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