名将への階段を昇るサンフレッチェ・森保一監督のマネジメント術 (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki 松岡健三郎●撮影 photo by Matsuoka Kenzaburo

「あの時間(60分前後)に判で押したように(FW佐藤)寿人から浅野に代えられるのは、寿人との信頼関係があるからだろう。あれを愚直にやり通すのは普通の監督にはできない。やり方を変えずにやり続けられるメンタルはすごいし、やり続けたことでチーム力を上げている。すばらしい監督だと思う」

 過去にJ1得点王を獲得したこともあり、長らくチームを支えてきた佐藤に代え、昨季までほとんど実績のなかった浅野を起用し続けることは、普通に考えればかなり勇気のいる決断である。

 だが、森保監督は「うまくなりたいという向上心の塊のような選手」だった浅野を「ポテンシャルに期待して」使い続けた。その結果、浅野は今季8ゴールを記録し、前述の通りベストヤングプレーヤー賞を獲得。その一方で、危機感をあおられた形となった佐藤もまた、昨季の11ゴールを上回る12ゴールと、12年連続2ケタ得点を記録した。

 森保監督の手腕が発揮されたのは、J1だけのことではない。むしろ選手層の厚さと指揮官の選手起用のうまさが如実に表れたのは、先ごろ行なわれたクラブワールドカップだったかもしれない。

 広島は初戦のオークランド・シティ(ニュージーランド)戦でMF野津田岳人、柴﨑晃成をケガで失ったが、その穴を埋めたのは、今季J1でわずか3試合しか出場していなかったMF茶島雄介。その他にも、森保監督はMF丸谷拓也、FW皆川佑介、MF宮原和也といった、J1では出場機会の少なかった選手も躊躇なく起用。広州恒大(中国)との3位決定戦までの全4試合を戦い抜き、広島を日本勢過去最高成績と並ぶ3位に導いた。

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