プロ19年。アビスパ古賀正紘が語る「現役引退を決意した瞬間」 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by YUTAKA/AFLO

 古賀は素直な気持ちを吐露した。

「福岡に来る前になんとなく、4年目が最後かな、という気持ちはありました。だから今年が駄目なら駄目だろうと、崖っぷちにいることは意識していましたね。井原監督には試合に出られていないときから、すごく気にかけてもらって、でもあまり言われすぎるのも居心地が悪いので、『(試合に出られず)腐るようなことはないんで、本当に気にしないでください!』と伝えました」

 実は、その体は悲鳴を上げていた。09年、柏時代にジャンプの着地で痛めた足首の手術をしたが、磐田時代は治まっていた激痛が福岡でぶり返した。ジャンプの高さが低くなり、一歩目の出足が遅くなった。慢性的な痛みでまともに練習ができなくなり、足首の怪我の連鎖か、今年7月にはもも裏の筋膜炎で戦線を離脱した。2カ月に及ぶ懸命のリハビリで復帰したが、10月には練習中にナイフを突き立てられるような痛みを感じ、地面に突っ伏した。

「心がポキリと折れた気がしましたね」

 そう言って、古賀は俯(うつむ)いた。体力の限界を感じた男は引退を実感し、決意は固めたつもりだった。しかし不意に、“俺は本当にサッカーをやめるのか?”と自問自答し、眠れなくなる夜もあった。お世話になった人たちに挨拶をするたび、皮肉なことに未練や後悔は大きくなっていったという。しかし、足首の痛みだけはどうしようもなかった。

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