常勝アントラーズの大黒柱。小笠原満男が示す「プロの矜持」

  • 佐野美樹●文 text&photo by Sano Miki

 そうして、徐々に“常勝軍団”らしいオーラを取り戻していった鹿島は、目を見張るような快進撃を見せた。Jリーグセカンドステージでは、第4節から第9節まで6連勝を飾るなどして首位争いを演じ、ナビスコカップでは決勝戦まで駆け上がっていった。

「優勝しないとわからないものがある。だから、今の若いやつにタイトルを獲らせたい」

 ここ数年、小笠原が幾度となく口にしてきた思いが、ついに実を結ぶときがやってきた。

 ナビスコカップ決勝戦。ガンバ大阪を相手に、小笠原は躍動した。いつにも増して大声を張り上げて、周囲の選手たちを鼓舞。まさに縦横無尽といった言葉どおりに、攻守に走り回った。勝利に対して、凄まじい限りの執念を見せ、その姿からは鬼気迫るものを感じた。小笠原の、プロとしての矜持(きょうじ)をそこに見た。

 そんな小笠原に引っ張られて、若手たちも奮闘した。試合序盤からアグレッシブに動き回り、セカンドボールを果敢に奪取。そこから、多くのチャンスを演出し、ゴールという結果につなげていった。守備でも体を張って、粘り強い対応でガンバの攻撃を封じた。そのまま最後まで積極的に仕掛けて、自分たちの力で勝利をモノにした。

 優勝を決めてひと息ついたあと、小笠原はチームメイトと喜びを分かち合った。その表情はさすがにうれしそうだった。念願だった、若手選手に優勝の喜びを経験させることができて、ひと仕事やり終えたような充実感に満ち溢れていた。

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