連覇時より強い。年間1位のサンフレッチェ「変幻自在の攻撃力」 (4ページ目)

  • 原田大輔●文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 これまでは前線のターゲットと言えば佐藤だけだったが、今季は高さと強さを兼ね備えたドウグラスやMF柴崎晃誠らが2列目に入った。彼らはゴール前でターゲットとなれるため、カウンターという戦術には最適だった。実際、カウンター攻撃に磨きがかかるにしたがって、ドウグラスはゴールを量産し始めた。それには当然、佐藤が潰れ役に徹していたことも忘れてはいけないが。

 また、そのカウンターを仕掛けるうえで、もうひとつポイントになったのは、サイドだった。中央ばかりでなく、スペースのあるサイドに素早く展開することで、カウンターの迫力はさらに増した。

 広島のサイドには、ミキッチをはじめ、柏や、リーグ終盤に活躍した清水、そして山岸智ら、強力なサイドアタッカー陣がいる。素早い飛び出しに定評がある彼らの働きが何より大きかった。

 加えて、彼らはキープ力があって、ドリブル突破という武器も持っている。そんな彼らを一層活用することで、もうひとつの攻撃の“形”が見えてきた。それが、サイドを起点とした攻撃だ。中央に比べて相手のマークが薄い分、そこから遅攻、速攻、状況に応じてさまざまな攻撃を仕掛けられるようになった。それが、この日の湘南戦でフルに発揮された。ミキッチが語る。

「昨季は相手にも(広島の攻撃を)研究されて、特にヒサ(佐藤)へのクロスに対する警戒が相当厳しくなった。そこで、自分たちで新たな攻撃のバリエーションを考えていった結果、新しい攻撃の形が生まれた。もっとクロスの質は上げていかなければいけないが、今季はドグ(ドウグラス)という明確なターゲットが加わったのも大きい。そのうえで、ヒサがいる。クロスを上げるこちらの選択肢が広がって、自分たち(サイドの選手)が攻撃の起点となっていることは、よく自覚している」

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