ジュビロ磐田をJ1復帰させた「名波イズム」と「3つの約束」 (3ページ目)

  • 望月文夫●文 text by Mochizuki Fumio
  • photo by Nikkan sports

 その変化は、サポーターたちも感じ取っていた。ジュビロでは練習後にほとんど毎日、サポーターと選手が直接触れ合う機会を設けているが、サポーターたちからこんな声をよく聞くようになった。

「以前よりも、選手が楽しそう。話もよくするし、表情が明るい。サインや写真にも気持ちよく応じてくれるようになった」

 そうやって変化を見せ始めた選手たちに対して、名波監督はそのつど、もともと課題としていたことを改めて意識させたり、新たなテーマを与えたりしていった。なかでも、最も声高に叫んでいたのは、「さぼらない。諦めない。(集中を)切らさない」という、3つの約束事だ。

 名波監督は、試合はもちろん、練習中でも、事あるごとにその言葉を繰り返した。おかげで、その意識はすぐにチーム内にも浸透していった。そして第6節(4月5日)、アウェーの横浜FC戦ではその成果がよく表れていた。

 それまで4勝1敗と、順調なスタートを切ったジュビロだったが、この日は早々に2失点を喫した。その後もリズムはつかめず、昨年までのジュビロならば、さらに追加点を奪われそうな展開だった。しかし前半終了間際から、「今季は違う」という姿を見せた。前半のアディショナルタイムにMF小林がFKを決めて1点差に詰め寄ると、後半に入ってからも2点を追加。見事な逆転勝利を飾ったのだ。

 試合後、殊勲の小林は勝因を聞かれて、すかさずこう語った。

「最後まで“諦めない”気持ちでプレーした結果」

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