佐藤寿人、通算157ゴールで育んだ「ストライカーの矜持」 (3ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei  佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 その動き出しやワンタッチでゴールを流し込む彼のスタイルを見れば、嗅覚や天性が基盤をなしていると思われがちだが、実は佐藤ほど努力家で研究熱心なフォワードは、なかなかお目にかかれない。

 たとえば、好きなフォワードとして挙げるフィリッポ・インザーギや、同じ左利きで小柄なアントニオ・ディ・ナターレといった世界の名手のプレーを何度もビデオを見て研究するだけでなく、身近な選手のプレーも貪欲に観察し、良いところは盗もうとした。

「仙台にいたときは、チームメイトの山下芳輝さんを参考にしていましたし、バンさん(播戸竜二)や、大黒(将志)くんとか、自分のスタイルや考え方が似ている選手のプレーを見て、盗んでやろうと。これまでいろんな先輩方のプレーを見て学んできたし、実際に自分のモノにした部分もあります」

 一方で、カズを模倣したようなあのスーパーゴールを、佐藤は決して手放しで喜んだわけではない。

「本当は普通のゴールがいいんですよ(笑)。普通のゴールというのは、動き出しの部分である程度、勝負が決まる。そこが僕の特長だし、理想のスタイルでもありますから。スーパーゴールやアクロバチックなゴールは一見、派手さはありますけど、ゴールの可能性は決して高くない。点を獲り続けるには、その確率をいかに高められるかだと思うので。言ってみれば、派手なゴールは多少無理しているんですよ。そうじゃなく、フィニッシュのときには、自分の技術の範囲内で勝負をつけたい」

 あくまで確率論の話である。イチかバチかの一撃よりも、地味でも確実性のあるフィニッシュの形を、佐藤はなにより大事にしてきたのだ。

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