播戸竜二が激白。劇的な昇格を決めた大宮アルディージャの舞台裏

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun

 5分のアディショナルタイムの終わりを告げる笛が鳴った瞬間、播戸竜二はベンチを飛び出した。この日、2得点を挙げ、さらに決勝点となるPKを奪ったFWムルジャに飛びついた。満面の笑みを浮かべる中で、播戸の目には光るものがハッキリと見えた。

「大宮アルディージャには、いろいろな経験を伝え、勝者のメンタリティーを植え付け、(チームを)優勝させるために来た。それは、自分の中でも大きな挑戦やったし、プレッシャーとかも含めて、大きなモノを背負って(大宮に)来たんでね、実際にそれを達成できた瞬間は、ホンマにうれしくて、久しぶりに涙が出てきた」

 J2リーグ第41節、大宮は3-2の逆転勝利で大分トリニータを撃破。この結果、大宮の勝ち点は83となって、最終節で2位ジュビロ磐田、3位アビスパ福岡(ともに勝ち点79)が勝っても大宮を上回ることはなく、クラブ史上初のJ2優勝を果たすとともに、J2降格1年目で見事J1復帰を決めたのだ。

奇跡的な逆転勝利でJ1昇格を決めた大宮アルディージャ。奇跡的な逆転勝利でJ1昇格を決めた大宮アルディージャ。 キックオフ前、吉報がベンチに届いた。勝ち点2差で追う2位の磐田が横浜FCに引き分けたのである。

「この試合に勝ったら『優勝やん』ってベンチは盛り上がった」(播戸)

 だが、活気づく大宮の選手たちの前に、試練が待っていた。前半を0-0で終えた後半、4分、9分と立て続けにオウンゴールで失点。2点のビハインドを背負って、この日のJ1昇格は絶望的な状況に陥った。ツキもなく、スタジアム全体に重い雰囲気が漂い始めていた。

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