絶望的状況の栃木SC。「底なし沼」J3降格が意味するものは? (4ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 長田洋平/アフロスポーツ●写真 photo by AFLO SPORTS

 J3に落ちることは、待遇以上のデメリットがある。「下部リーグへの降格はクラブにとって底なし沼に入るも同然」とも言われる。一度落ちたら、もがけばもがくほど深みにはまる。気力を含めた体力が落ちていく。事実、Jリーグでも東京ヴェルディ、ジェフ千葉ら古豪がJ2で悪戦苦闘し、FC町田ゼルビア、ガイナーレ鳥取もJ3から這い上がれずにいる。

 栃木はこのままずるずるとJ3に降格することになるのだろうか。対戦相手である北九州の指揮官で、08年には栃木をJリーグに昇格させた柱谷幸一監督はこう語る。

「過去に選手、監督で在籍したクラブについてはいつも気にしています。自分は関東で県内に唯一、Jリーグを持っていない栃木で監督をやらせてもらい、1年目はうまくいかず、2年目で昇格することができました。そのときに思ったのは、栃木教員というチームのベースがあってこそ、(栃木SCで)チャレンジさせてもらった。その思いを持って戦うことができたし、年月を経ても、プレーヤーはその歴史を忘れず戦ってもらいたい」

 クラブの歴史とそこに巡り合わせた者たち。積み重ねてきた自負心の先に、日本サッカーの未来もあるのかもしれない。勝負に挑む者は常に敗北を恥じるべきで、絶望が夢を拵(こしら)えるのだ。
 
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