絶望的状況の栃木SC。「底なし沼」J3降格が意味するものは? (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 長田洋平/アフロスポーツ●写真 photo by AFLO SPORTS

 もっとも世界的に見て、J3のクラブや選手が特に辛酸をなめているかというと、そうでもない。

 世界最高峰のスペインのリーガエスパニョーラでは、レアル・マドリードやFCバルセロナは年間予算約6億ユーロ(約780億円)と破格。主力選手1人の年俸だけで10億円を超える。他の1部リーグのクラブも約5000万ユーロ(65億円)以上と、やはり潤沢だ。

 ところが、2部リーグのクラブは約700万ユーロ(約9億円)と(放映権の格差により)一気に下がる。そして3部リーグに至っては、5千万円程度のクラブもざらにある。

 リーガエスパニョーラが強く逞しいのは、この格差による「夢の回路」があるからだ。

 3部の選手が1部の上位クラブに移籍してプレーするというケースは少なくない。プレーを向上させることができたら一攫千金。そこに下部リーグで戦いを積み上げる面白さがある。人材の層が厚い中、それを突き破った選手には人気と名誉を得られる夢が眠っている。

 残念ながら、Jリーグでは3部と1部の選手の力量差は大きい。にもかかわらず、J3の選手もJリーガーと等しく見られ、経済的にそこまで悲観すべき立場になく、現実に身を埋めてしまう。結果、“下克上”はほとんど見られない―――。夢の回路の機能が乏しい。ここは日本サッカーが歴史を積み重ねるしかないのだろうか。

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る