清水エスパルス、J2降格の真相。発端は5年前の「事件」 (2ページ目)

  • 望月文夫●文 text by Mochizuki Fumio
  • 松岡健三郎●撮影 photo by Matsuoka Kenzaburo

 発端は、皮肉にも開幕序盤で首位を走っていた2010年。2005年に就任した長谷川健太監督(現ガンバ大阪監督)が、契約最終年度となる6年目のシーズンを戦っているときだ。

"事件"は、そのシーズン終盤に起こった。クラブが、長らくチームに貢献してきた元日本代表のMF伊東輝悦(現AC長野パルセイロ/J3)とMF市川大祐(現FC今治/四国リーグ)との契約を延長しないことが発覚したのだ。しかも、ふたりへの突然の通達がクラブ功労者への配慮を欠く行為だと、選手たちが激怒。選手とクラブとの間に一気に亀裂が走った。

 これが、クラブ転落への「第1章」の幕開けだった。以降、それ以前からくすぶっていた選手側のクラブへの不信感もあって、両者の溝は一層深まっていく。そして、事態を収拾できないまま、2010年シーズン終了後、日本代表FW岡崎慎司(現レスター/イングランド)ら主力選手が大量流出。チームの戦力は大幅にダウンした。

 その翌シーズン、アフシン・ゴトビ監督が指揮官に就任した。ここから、転落への「第2章」が始まった。

 ゴトビ監督は、FW高原直泰(現SC相模原/J3)、MF小野伸二(現コンサドーレ札幌/J2)、MF小林大悟(現ニューイングランド・レボリューション/アメリカ)ら経験豊富な実力者を徐々に控えに回し、若手中心へとシフトしていった。すると、それまでの、テンポよくボールが動く"静岡らしい"サッカーが影を潜め、攻撃力が低下。勝ち切る試合が激減し、6年ぶりにふた桁順位(10位)という屈辱を味わった。

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