【育将・今西和男】久保竜彦「S級より、小学生にサッカーの楽しさを伝えたい」 (5ページ目)

  • 木村元彦●文 text by Kimura Yukihiko
  • photo by Kyodo News

「ジーコの頃になると、後輩も増えて、飲んで本心がわかる相手もできてきましたけど、それまではやっぱりしゃべる人もおらんかったし、しんどかったですね」

 そういう中で今でも忘れられない試合があるという。トルシエ時代の2002年5月14日、アウェーのオスロで行なわれたノルウェー戦である。

「何か寒いところでやったときですけど、本当にしゃべる人がおらんで、息苦しかったときに先発やったんですね。ほんで始まる前に(ピッチから)スタンドを見たら、そこに今西さんがおって、目が合ったんです。来とるんや、と思ってびっくりしてたら、こうやってガッツポーズを作って見せてくれたんです。ほんで『ヨッシャー、やったる!』と思いましたね。それまでビビッてたわけじゃないけど、腹が据わるというか、そういうのがありました。でも何もできなかったけど(笑)」

 久保は今、廿日市FCで現役を続けながらストライカー養成コーチをしている。就任の経緯は連載の初号に記している。大木が愛媛を引退すると、すぐに電話をしてチームに誘い、広島県リーグで再び一緒にプレーしている。

「ベンさんには、また2トップ組もうやって言って誘ったんです。将来はS級取ってプロの指導者というよりも僕が一番、サッカーが楽しかったのは三輪小学校のときやったんで、そういう楽しさを子どもたちに、まず教えたいと思ってるんです。金沢で引退して広島に帰るのを選んだのはやっぱり、自分を人として成長させてくれた人がおったからです。人生の節目では『タツ、そういうときはな』といつも僕を信じて指導してくれました」

 今西のマインドを今、久保は子どもたちに伝えている。
(つづく)

5 / 6

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る