2015.08.29

【育将・今西和男】逸材・久保竜彦のために早婚を薦め、酒を控えさせた

  • 木村元彦●文 text by Kimura Yukihiko
  • photo by Kyodo News

 食生活が安定するとプレーにも余裕が出た。最初はサテライトリーグ(※)でセンターバックやサイドバックをやらされていたが、河内にFWにコンバートされると一気に才能が開花した。久保はものが違う!とトップの高木琢也や森保一も一目置くようになった。「外国人ストライカーもよく見てきましたが、タツは見劣りしないどころか、それよりもすごいと思わせるものがありました」(高木)
※実戦経験の少ない若手選手のために、2009年まで行なわれていた育成リーグ

 サンフレッチェを背負って立つことは疑いのないところで、今西はこれを機会に久保の私生活を安定させようと決意した。相変わらずチームメイトと口は利かなかったが、九州の男らしく酒が好きで、街で飲み歩くうちに酒場で友達が出来ていた。泥酔して帰って来て寮の前の電柱に寄りかかってチームの名前の入ったジャージを着たまま寝てしまっていることもあった。今西は秘密裏に高校の恩師に連絡を取り、彼女の存在がいることを知ると単身、福岡の両親のところに向かった。

「どうぞ、竜彦くんを早く結婚させてあげて下さい。彼はまだ若いけれど、私も23歳で結婚しました。サッカー選手として一番重要な時期です。責任を持たせて、生活も安定させてプレーに集中させてやって下さい」と丁寧に早婚の薦めを語ったのである。広島に帰ると返す刀で久保の飲み友達のところへ回って、これからはタツを飲みに誘わないでくれと訴えた。入団3年目21歳で久保は挙式する。

「最初に見た今西さんは怖かったけど、怒鳴られたこととかは全然なくて、自然にいろんなことを気づかせてもらいました。僕は若い頃は勉強もせんと、好きなことしかせえへんかった。プロやしカネがあったから毎日飲み歩いてました。僕は普段しゃべらんけど、酒を飲むとすぐに友達ができるんです。でも、それじゃあダメやと分からせてくれたし、結婚も無理やりじゃなくて、自然に決めたもらった感じでうまくいきました。今西さんはカッコいいんです。それから、あの人の人への接し方とか、じっと見ていて真似しようとかしていました」