これぞキング・カズ。驚愕の「若き日の武勇伝」 (3ページ目)

  • 渡辺達也●取材・文 text by Watanabe Tatsuya 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 1990年、カズは読売クラブ(現東京ヴェルディ)に移籍。若き日のカズは、やんちゃな一面もあった。

 新車を購入したチームメイトの北澤豪が、カズを助手席に乗せて家まで送ったときのことだ。ふたりでガムを噛みながらサッカー話で盛り上がっていた。信号待ちのとき、カズがサンルーフを開けて、ガムを「プッ」と外に出した。ガムは綺麗な放物線を描いて新車のボンネットにぽとり。怒ってキレた北澤は、こう言った。

「カズさん......、降りる?」

 カズは、外に出てガムを拾い、ボンネットを拭いたとか......。

 また、スーパーへ買い出しに行ったときには、会計前にジュースのキャップを外して、飲みながらカートを押してお買い物。会計の時、カートの中に半分減っているジュースを見つけたレジのお姉さんが聞いた。

「あの~、こちらの商品は?」

 カズは答えた。

「買うよ」

 当時は、まだブラジルでの習慣が抜けていなかったようだ。


 2005年、カズは38歳で横浜FCに移籍。当初、横浜FCは専用練習場がなく、一般にも開放されている人工芝のグラウンドで練習していた。また、練習後のシャワーは10分100円のコインシャワー。そんな環境にも、「みんな100円しか使わないけど、俺は200円使っている」と笑っていた。

 横浜FCの練習を見学するファンは、それほど多くはない。練習後の選手は、ファンから「サインして下さい」と呼ばれることが多いが、なかには車に乗り込み無言で去っていく選手もいる。しかしカズは、いつもひとりひとりにサインをし、一緒に写真に収まり、時には雑談をして、笑い声が挙がる。

「みんな、サインが欲しいんだよ。1時間も2時間もかかるわけじゃないからね。プロなら当たり前だよ」

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