豊田陽平インタビュー「今季の鳥栖は甘えが出ている」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Getty Images

 はたして豊田本人は、自分が置かれた現状をどう受け止め、どう行動しようとしているのだろうか―――。

 2015年6月21日、佐賀県鳥栖市。昼に近づく頃には気温が一気に上昇し、肌に粘り着くような暑気だった。前日のリーグ戦はFC東京に1-2と本拠地で逆転負け。午前11時からのリカバリーを終えた豊田は、練習場の近くにある蕎麦屋「銀次郎」の駐車場に愛車を停めた。

 昼はもっぱら外食だ。

 管理栄養士である妻の料理が支えになっていることは弁(わきま)えているが、子供の頃から「外食」という響きには密かに胸が躍るという。愛想良く近づいてきた店員に「天ぷら蕎麦セットの大盛り」を注文した。蕎麦はモンテディオ山形でプレイしていた時代に好きになった。食べることにストレスを持ち込みたくないので、好きなものを口にする。偏食にならないようには心に留めているが、気兼ねなく自由に食べたいものを食べる。

 もっとも、食事に関してはこだわりがないわけではない。

「朝食は1シーズン、基本的には同じメニューにしていますね。ご飯、味噌汁、ウィンナー、サラダ、卵、牛乳。味噌汁は具よりも、とにかく熱いこと。卵料理はスクランブルエッグや卵焼きやオムレツなどバリエーションはあります。これがベース。例えば、昨日の晩ご飯で残った塩鯖を加えて、とかいうのはありません。デザートで、疲労回復効果のあるキウイやオレンジを食べることはありますけど」

 食生活を一定化することで、体のリズムを整え、どんなときも同じ力が出せるようにする。それは多くの一流アスリートが実践している習慣だが、豊田は2010年に鳥栖に入団以来、作ったパターンを崩していない。安定した日常が彼の心をリセットさせ、新たな心境で戦いに臨ませる。

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