豊田陽平「アジア杯の代表に一丸となって戦う手応えはなかった」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by AAP Images/AFLO

「ただ、ピッチに立つと自分は責任を感じます。そこで力を出し切って結果を出すんだけど、そのハードルはどんどん上がっていくわけです。そこで、“これ以上はできないんじゃないか”という弱気が生まれることもある。マイナス思考ですよね。でも、結局それを考えるのは時間の無駄なんです。変化を怖がらず、行動あるのみ。自分がやってきたことを信じて、“これ以上はやれない”と割り切る。そして、できるだけのことを全力でするんです」

 どこかで線を引き、腹を括り、一心に行動する。そこで結果を出したとしても、現状に甘えない。

「海外でプレイしたい欲求は、やっぱりありますね」

 彼は募る思いを口にする。

「代表でオカちゃん(岡崎慎司)とも話したんですが、海外でプレイすると、まず評価基準が変わるらしいんです。それで自分のプレイ志向も変わらざるを得ない。例えばFWは守備を熱心にするからといって評価をされることはなく、ポジションが得られることもない。とにかくゴールが一番。『得点を取れる選手という信頼が大事』とも言っていましたね。ゴールを重ねるしかない。日本にいるときとは違うんだろうし、そこはすんなりとはいかないはず。でも、そういう環境でやってみたいんです」

 変化なくして進歩もない。アスリートは失敗を恐れて躊躇した時点で、成長が止まってしまう。

「ピッチの中にいて、呼吸のようなものは以前よりも分かってきました」

 豊田は静かに言う。

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