開幕2連勝。豊田陽平「鳥栖の強さは最後に出る」 (6ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 日刊スポーツ/アフロ●写真

 伝統という点では、「朝日山」もプレシーズンの風物詩だろう。市内にある小高い山、290段もの階段を駆け上がった後、なだらかな坂を下り、また階段を上り、下りを繰り返す。足の筋肉はぱんぱんに張る。地獄と形容されるトレーニングだ。

「朝日山は今年もやりました。ただ個人的に思うのは、周りが“朝日山をやらないと勝てない”みたいになるのはどうかと思います。それぞれ監督のやり方もあると思うし、“やれば勝てるおまじない”ではないんで」

 豊田らしい持論だろう。情に動かされることのある選手だが、情だけでは動かない。彼なりの線引きがある。「朝日山」は伝統だが、そのものを神格化することに論理的な意味はない。

「新シーズンは、タイトルを今まで以上に真剣に狙っていきたいと思います。2シーズン制になって、そういう機会が増えました。自分は鳥栖というチームと成長してきましたし、タイトルを取ることでその成長も加速するでしょう。それにタイトルを取れば、メディアやファンのサッカーの見方だったりも成熟してくるし、一緒に大きくなれると思います」

 そう語る豊田は、鳥栖のストライカーとして着実に進化を遂げてきた。

 一つの証として、2015年1月にオーストラリアで行なわれたアジアカップで日本代表にも選ばれ、2試合でピッチに立っている。それは2013年の東アジア選手権に続く、タイトルを懸けた大会だった。そこで彼が得た境地とは――。

「結末の部分はブラジルW杯と同じだったと思いますね」

 お膳を片付けた彼は、ゆっくりと語り出した。
(続く)

6 / 6

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る