宇佐美貴史の覚悟「得点王になる。それが四冠への必須条件」 (5ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 実は、宇佐美には自分が「まだまだ」と痛感させられた映像があった。昨季の第22節(8月30日)、アルビレックス新潟戦(5-0)におけるMF倉田秋のゴールシーンである。ガンバは、カウンターからFW佐藤晃大が抜け出してシュートを放ったが、相手GKに弾かれた。だが、次の瞬間、後方から駆け上がってきた倉田がこぼれ球を押し込んだのだ。

 その際、宇佐美は倉田よりも前にいた。にもかかわらず、宇佐美はただ立ち尽くしていた。倉田のように懸命に走って、ゴール前に詰めることを忘れていたのだ。「これが、おまえに足りない部分だ」と長谷川監督に指摘された。

「そういう状況を感じて走る能力と、たとえ無駄走りになってもそれを継続する根気ですよね。そういう部分は、(自分自身)もっと求めて、高めていかなければいけないと思っています。(ボールが)こぼれてくる確率は低いかもしれないけど、そこで詰めて決めたゴールも、5人抜いて決めるゴールも、同じ1点ですから。そういう形を決められるようになるかどうか、それは大きいですよね。

 実際、僕はごっつぁんゴールとか、1タッチゴールが少ないんですよ。逆に(2年連続で)得点王になった大久保(嘉人/川崎フロンターレ)さんは、自分の形だけでなく、そういう形やゴール前にきっちり詰めて点を取っているのが大きい。僕にしか取れない得点の形はたくさんあるので、そういう、ある意味でFWらしいゴールを自分も増やすことができれば、もっと点が増える。そうすれば、得点王は獲れると思っています」

 宇佐美がゴールを奪えば、「チームに勢いが出る」と主将の遠藤保仁は言う。今や宇佐美は、チームの勝敗を左右するほど大きな影響力を持っている。彼が公言する目標が達成できれば、ガンバの四冠という偉業も見えてくるかもしれない。

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