札幌・バルバ監督が語る「スペインリーグ八百長の背景」

  • 木村元彦●文・写真 text & photo by Kimura Yukihiko

――若手の育成についても聞きたいですね。あなたは愛媛FC時代に齋藤学(現・横浜)を育て上げた。若手とベテランのバランスをどう取っていますか?

「J2においては、ハートの強さ、運動量、フィジカルの強さというのは絶対に欠かせない。私が単純にそこで考えるのは、ピッチの上で一番いいパフォーマンスをしている11人を選ぶ。そこだけです。そこにベテランだとか、若手だとかというのは関係ない。

(札幌には)河合(竜二)、稲本、小野、砂川(誠)という質の高いベテランがいるわけですけれど、彼らが名前だけでプレーできるかというと、そうじゃない。彼ら自身も自分たちの力をピッチの中で見せて、先発争いという競争に勝たなければいけない。

(齋藤)学の話について言えば、彼に会った時点で能力があるというのはわかりました。一瞬のスピード、ボールコントロール、そしてアイデア。彼みたいな選手には、日本でほとんど会ったことがなかった。初日に通訳のキタジマに『絶対にこいつを褒めないようにしろ』と言いました。メディアの前でこいつを褒めたら、次の瞬間に、どこかのチームに連れていかれると。私が彼の助けになったとすれば、『チームを機能させながら、自分の個を生かすにはどうしたらいいのか』。その部分を整理してあげたというところです」

――練習メニューも、齋藤学用のトレーニングを組み込んだと聞いています。

「チームにとって非常に重要でしたから、彼にはある意味、自由を与えました。チームとして最低限のことは、もちろんやらせましたけれども、なるべく自由にさせてあげた。それぐらい彼の存在は飛び抜けていた。私は信頼していました。

 横浜マリノスに戻るかどうか迷っていたときに、学にアドバイスしたのは『間違いなく、おまえはマリノスでもレギュラーを確保して代表に入っていく。ただ、肝心のおまえ自身が自分の力を信じられなかったら、それは絶対に実現しないことだ』と、そんな話をしました」

――最後に、なぜ、旧ユーゴから名監督は出るのでしょうか?

「確かに多くの出身者がサッカー大国で大きな成功を収めている。スペインでもレアルやバルサでミリャニッチやアンティッチが活躍した。他国に行ってもそこの環境に順応できるメンタルを持っていることが大きいですね。

 悲惨な内戦もあったが、それを乗り越えつつあります。政治家が煽動した状況で、自分たちは対立しなければいけなかった。だけど、それは過去のことで、ボスニア代表のW杯出場や指導者ハリルホジッチの躍進を見れば、もう、それには触れずに前を向いていこう。そのようなメッセージに自分は聞こえます」

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