松木安太郎と福田正博が代表監督に求める「条件」とは? (2ページ目)

  • 津金一郎●構成 text by Tsugane Ichiro

福田 W杯の第2戦、ギリシャ戦(0-0)で、相手の退場で日本がひとり多くなっている時に何の手も打てなかったのは、そういうことなのかもしれませんね。

松木 あの試合でこそ、ザッケローニ監督は自らが目指していた「3−4−3」をやるべきだった。それまでに何度か試してうまくいかなかったし、「4−2−3−1」という戦い方で結果を出してきたからプレッシャーがかかる場面で決断ができなかったんだと思う。ザッケローニ監督に大舞台の経験がなかったことが影響したという意見もあるけれど、じゃあ同じように経験がなくてもいいのなら、代表監督を日本人に任せてもいいと思うんだよ。もしくは、選手を育てながらアジア勢と戦うW杯予選が終わるまでは、日本人選手のことを理解していて、育成手腕のある日本人監督に任せて、予選突破後、本大会までの1年ちょっとは勝負師としての外国人監督を連れて来るという考え方だってある。それくらい大胆な手を打ってもいいと思うな。

■「ダブルスタンダード」に対応できる監督を探せ!

福田 それも可能性としてはありますね。日本代表を外国人監督に任すのであれば、やはりJリーグで指導経験がある監督がいいと僕は思うんです。しかも、世界における日本代表の立ち位置と似ているJリーグのクラブの監督という条件はつくのですが。

松木 それはどういった条件?

photo by Yamamoto Raitaphoto by Yamamoto Raita福田 日本代表には"アジアでの戦い"と、"W杯での戦い"というダブルスタンダードの問題が常についてまわります。サッカーで勝負を分けるのは、ゴール前で仕事ができるかどうかですが、アジアでの戦いでは体格差やパワー差はほとんどないですが、世界との戦いでは体格やパワーでハンデを負うことになります。そう考えると、センターフォワードに体格差で勝る外国人選手を連れて来て結果を残している監督では厳しいのかな、と。たとえば、2006年に浦和がJリーグを制した時、監督のギド(・ブッフバルト)はFWにワシントン(元ブラジル代表)を置きました。だけど、ワシントンみたいな強烈なFWは日本人にはいませんからね。

松木 日本代表に外国人選手を連れて来るわけにはいかないからね。帰化という手もあるけれど、現実的ではないし......。

福田 だから、Jリーグで結果を残しているかどうかというよりも、戦術や指導法をそのまま日本代表に置き換えられる人がいいと思うんです。実際、オシム監督がそうだったと思います。オシム監督は2003年からジェフ市原(当時/現在は千葉)を指揮されて、2006年に日本代表監督に就任しましたが、ジェフ時代から個々のタレントに依存しないサッカーを実践して、クラブを上位に引き上げました。Jリーグで結果を出すことを考えたら、勝負を決めるゴール前で違いを出せる選手を起用することが即効性のある手段なので、強力な外国人FWを連れて来る監督もいます。クラブチームは国籍に関係なく選手を補強できるので当然の選択ですが、そういう監督が日本代表監督に適任かと言ったら、疑問が残るんです。弱者としての立場を自覚し、格上にどうやって勝つかを考える。それは世界での日本代表の立ち位置と似ています。オシム監督のこのスタンスは、代表監督になってからもブレなかった。

2 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る