激論!松木安太郎と福田正博が考える「Jリーグの未来」 (2ページ目)

  • 津金一郎●構成 text by Tsugane Ichiro

photo by Yamamoto Raitaphoto by Yamamoto Raita福田 ペトロビッチ監督のやっているスタイルは間違ってないと思うんです。サンフレッチェ広島はペトロビッチ監督時代のスタイルを森保(一)監督が継続して連覇を成し遂げました(2012年、2013年)。

松木 じゃあ、何が足りなかったのか――。

福田 守りを固められた時に、個の力で打ち破れる選手でしょうね。ペトロビッチ監督のスタイルは、ボールポゼッションを高めてパスワークと連動性で相手を崩すものなので、相手の組織を乱すような個の力が突出した選手を置いていない。だから、相手にゴール前を固められると、得点できなくなり、リーグ戦終盤で痛い勝ち点を落としたんだと思います。

松木 突出した選手がいると依存度が高くなるから、ペトロビッチ監督のようなスタイルとは相反するということはわかる。だけど、同じスタイルを継承した広島が2連覇できたのはどうしてなのか?

福田 ペトロビッチ監督はピッチの中での選手の自主性や独創性を尊重している監督で、練習は攻撃練習がほとんど。トレーニングで守備練習もセットプレーの練習もほとんどしないんです。だけど、広島は森保監督が就任してから、守備を組織的にし、セットプレーでも厳しさを植えつけて連覇した。ただ、浦和も昨年の失速があったので、今シーズンは守備への意識も高まっていたんです。実際、1対0で勝利する試合も多かった。でも、ペトロビッチ監督が真に目指すサッカーは攻撃重視ということもあって、最後の最後で監督の攻撃的な姿勢というのが出た。

松木 それが結果として裏目に出たということか。

福田 そこは複雑ですね。監督としては優勝争いに残ったから、ラストスパートのところは攻撃的な自分たちのスタイルを貫きたかったのかもしれません。一方で、選手たちにしてみれば、2013年は攻撃的にいって大量失点して、タイトルに手が届かなかったことを覚えている。監督は攻撃的なサッカーを望んだけれど、選手たちは昨年の二の舞は避けたいので躊躇したのではないでしょうか。その点で監督と選手の意思疎通をやや欠いていたように感じましたね。だから、今年は大事な終盤戦で追加点を奪えずに勝ち点を落とした。

松木 あとは、どうしても勝たなくてはいけないというプレッシャーだろうね。浦和はあれだけの観客が入るから、それは広島とは比較にならないほど大きい。

福田 選手たちに「ホームで勝たなくてはいけない」という気負いがあって、それが判断を鈍らせたとも言えるでしょうね。ペトロビッチ監督のサッカーは、単にボールポゼッションを高めて、バルセロナのように相手陣に押し込むのではなくて、ゴールキーパーを含めてボール回しをしながら、相手を自陣へ誘い込むものですから。

松木 攻撃するためのスペースが欲しいから、相手をおびき寄せている、と。

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