磐田・名波浩監督が激白「リアクションサッカーはしない」 (6ページ目)

  • 渡辺達也●構成 text by Watanabe Tatsuya
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

――何はともあれ、久しぶりに“戦いの場”に戻ってきたわけですけど、どういう心境でしたか。

名波 血が騒いだからね。やっぱり(自分は)、こういう戦いの場が好きなんだろうね。なかなか想定どおりにはいかなかったけど、少しだけ自信を得た9試合というか、2カ月でもあったかな。

――監督というのは、楽しいですか。それとも厳しいですか。

名波 楽しい、楽しい。厳しさなんか、全然感じなかった。試合に勝てない難しさや、コミュニケーションのレベルが上がってこない難しさはあったけど、チームマネジメントはいい方向に向かっていると思うからね。深刻に悩んだり、考え込んだりすることもなかった。嫁さんに聞いてもらえばわかるけど、家でふさぎ込むようなこともなかった。自分はポジティブなんだろうね、勝てなくても「やべぇ、どうしよう」ってならないから。「まあ、なんとかなるだろう」って、グラウンドでもずっとそういう空気を発している。

――解説者をやっていたときのほうが「楽だったな」ということはないですか。

名波 どっちが楽しいとか、大変とか、ないよ。監督業も、解説業も、“サッカー人”としてどちらも重要な仕事だと思っている。だけど、この間、久しぶりに試合の解説をしたんだけど、ダメだったね。ブランクが3カ月もあると、余計なことを喋っちゃう。だから、リアリティーがない。本来なら、いいパスが出た場合、そのボールの質とかコントロールの質とかを伝えたいのに、その前で喋り過ぎちゃっているから、「ナイスパス」って言って終わっちゃうんだよね。あと、実況の人と声がかぶったり、リズムが合わなかったりもして……。そんなこと今までなかったのに、やっぱり少しでも現場を離れるとダメだね。たぶん、ピッチ解説なんて、今は絶対できないよ。実況や解説の間に、いつ割って入っていいかわからないから。ピッチ上であたふたしちゃうだろうね(笑)。

――最後に、改めて来季への意気込みをお聞かせください。

名波 多少、選手も入れ替わって、よりクオリティーの高いサッカーができると思う。「それがなんだ」って言われると困るけど、自分が求めていくのはそこ。そして、対戦相手にリスペクトされる存在になりたい。そうすれば、勝てないときでも、しぶとく引き分けて、負けないようにすることができる。一昨年のガンバ大阪やヴィッセル神戸がそうだったと思うんだけど、ジュビロをそういうチームにはしたいよね。

――本日はありがとうございました。来季のご活躍を期待しています。

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