J逆転優勝へ。宇佐美貴史「僕がガンバを勝たせたい」

  • 高村美砂●文 text by Takamura Misa
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 その大一番を前に、宇佐美が決意を口にする。

「ビッグマッチは、序盤から堅い試合になるだろうし、先制点が大事になってくると思います。ただ、ナビスコカップの決勝のように、(相手に)2点を先行されたところから、逆転できた自分たちもいる。今のガンバにはそれだけの力があることを考えても、大事なのは、試合の流れを選手個々がしっかり感じながら、その時々で必要なプレイを実践すること。

 ナビスコカップ決勝と同様、今回も負けたら終わり、という意味では決勝戦、ファイナルのようなもの。(リーグ戦の)優勝の行方が決まるという意味では、今季最も注目度の高い試合だと思うだけに、ものすごくワクワクしているし、楽しみな気持ちのほうが大きいです」

 もちろん、その中で自分自身に求められる仕事も理解している。ここ最近は、周囲を生かす"アシスト"も光る宇佐美だが、「FWだからこそ、点を取ることが自分の仕事」だということを当然、忘れてはいない。

「点は、取りたいですね。レッズは守備の堅いチームですが、それを打開できるかどうかは、最終的には個の部分だと思いますから。どれだけ組織だって戦ってくる相手にでも、最後にそれをこじ開けるには、個が仕掛けること、ボールを動かして局面を変えること、そしてゴールを狙うことが求められる。それを自覚しているからこそ、レッズ戦でもゴールを取りたい。(点を)取って、僕がガンバを勝たせたいと思います」

 決戦の舞台は、埼玉スタジアム。ホームの万博記念競技場をこよなく愛することで知られる宇佐美だが、実は埼玉スタジアムも「好きですよ」と笑う。

「あのスタジアムの雰囲気、人の密集した感覚、すごい応援は、レッズにも大きなモチベーションになっているはずですが、アウェーの僕らに対しても、モチベーションを与えてくれるところがありますからね。あの殺気だった空気感というか......スタジアムに入るなり、敵意むき出しで大ブーイングされるのも、いい意味で気持ちを入れるスイッチになる。おまけに、大一番が(僕は)大好物ですから。当日の雰囲気を想像しただけでも、楽しみで仕方がない」

 気持ちも、体も、準備は整った。これまでずっと秘めてきた「愛するガンバのために」という思いも、しっかりと備えている。あとは、「僕がガンバを勝たせたい」という決意を、「何個でも獲りたい」と語った"タイトル"への欲を、決戦のピッチで出し切るだけだ。それができれば、宇佐美にとっても、ガンバにとっても、最高の結果が待っているに違いない。

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