「オリジナル10」降格の危機。清水に何が起きているのか (3ページ目)

  • 中山淳●文 text by Nakayama Atsushi 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 注目すべき点は、その中身にもある。故障者の影響もあるだろうが、若い指揮官は勝てない中でシステムを3バックに変更したり、4バックに戻したりと、リズムを失った若いチームをさらに混乱させている印象は拭えない。実際、冒頭に触れた第29節のアルビレックス戦も、4バックに戻してから3試合目だったのだが、1点をリードして迎えた後半立ち上がりにアルビレックスに押し込まれると、システムを4-3-3から4-2-3-1に変更。守備の安定を図ったものの、その後も流れが変わらず一度は同点に追いつかれている。

 結局、現在のエスパルスは、攻撃も守備もどっちつかずの状態が続いているのだ。

 とりわけ、守備バランスの悪さは顕著だ。基本システムの4-3-3の場合、中盤の3人は底に本田拓也、両脇には六平光成、石毛秀樹が固めるのだが、この左右のふたりはあくまでもアタッカー系だ。それに加えて、前線の両サイドは大前元紀と高木俊幸という守備を得意としない駒が並び、両サイドバックの河井陽介、吉田豊も攻撃参加を武器とする選手。そうなると、相手ボール時に4-1-4-1の陣形にして守備組織を作っても、形はあれど実態が追いつかない、良い形でボールを奪えないという現象に陥ってしまうのだ。

 大榎監督も、ゴトビほど割り切った戦い方をするには経験が少なすぎる。要するに、采配の迷いがシステム変更という形で表れているというのが実情なのではないだろうか。

 いずれにしても、18位・徳島ヴォルティスの降格が決定したため、残る降格の椅子は2席となった。もちろん、エスパルスがその2席に座るかどうかはまだ分からないが、少なくとも、降格しても何ら不思議ではない――というのが現状だ。

 サッカー王国の名門は、今、そんな状況に陥っている。

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