「オリジナル10」降格の危機。清水に何が起きているのか (2ページ目)

  • 中山淳●文 text by Nakayama Atsushi 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 そんなエスパルスも、アフシン・ゴトビ前監督が就任した2011年あたりから、急激に予算の縮小傾向が表面化し始めた。それまで実績あるベテランや主軸選手だった伊東輝悦、市川大祐、岡崎慎司、藤本淳吾、青山直晃らを一気に放出し、若手中心のチーム編成に大きく路線変更。翌年の2012年には小野伸二、岩下敬輔、枝村匠馬、さらに昨年も高原直泰がチームを離れていった。

 こうなると、ゴトビ監督も世代交代を推し進めざるを得ない。それでも、そんなクラブの財政事情を受け入れながら、ピッチを広く使って展開する攻撃サッカーをブレずに続けた結果、就任初年度は10位、2年目には9位という成績を残すことができた。

 もっとも、2年目はシーズン中盤で9試合白星から遠ざかったり、最後の4節を勝ちなしでシーズンを終えたりと、好不調の波が異常に激しかった点も見逃してはならない。これこそ、勝っているときは勢いを増し、負けると突如として自信を失うという、若いチームの典型とも言える現象だ。

 結局、3年目の2013年も9位という成績でシーズンを終えることはできたが、2011年から続いている路線と傾向は今も変わっていない。基本は「若手+助っ人外国人選手」で、優勝を狙える補強もなく、しかし降格だけは避けたい......という微妙な立ち位置で、なんとかシーズンを乗り切るというのが現状なのだ。

 そこで、ミクロの視点である。

 今季も同じスタンスで臨んだエスパルスだったが、さすがにゴトビ・サッカーも「勤続疲労」を起こした。第10節から7試合白星から遠ざかると、第17節の柏レイソル戦に勝利した後に、ゴトビ監督が電撃解任。バトンが、それまでユースの監督を務めていたクラブのレジェンド――大榎克己に渡されると、事態はさらに複雑化した。

 大榎新監督が就任した時点での順位は12位。まだ上にも行けるし、下に落ちることもあるという分岐点のようなポジションだったが、流れは良い方向に傾かなかった。

「今までのサッカーに自分のサッカーを少しアレンジしながら修正する」と公言して前任者の攻撃サッカーを継承する大榎監督だったが、ゴトビ時代から続いていた守備のもろさはさらに悪化。初采配のFC東京戦を0-4のスコアで大敗すると、第20節から26節までは1分6敗という負のスパイラルに陥ってしまった。しかもその間の7試合で、なんと20失点を喫しているのだ。

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