悲願の優勝へ。川崎・大久保嘉人がチームメイトに「喝」 (2ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 常に敵の動きを見極め、その逆を取る動きでマークを外し、鮮やかなパスワークで完璧なまでに相手ディフェンスを崩し切る。風間八宏監督の薫陶を受けた川崎の選手たちが見せるパスサッカーは、実に魅力的なものだった。今季J1において、大きな注目を集めたトピックスのひとつである。

 しかしその一方で、ときにあっけないほどの脆(もろ)さを見せるのもまた、川崎のもうひとつの顔だった。

 ボールポゼッションでこそ相手を上回るものの、効果的な縦パスが入らず、攻撃は停滞。大久保が「自信と積極性がなくなると、いつもこんな試合になる」と嘆くのも無理はない。川崎が見せる上質なパスサッカーはすでに広く知られるところとなったが、その印象に比して、勝ち点が思ったほど伸びない原因は、その辺りにあるのだろう。

 第19節(8月9日)では浦和との直接対決を2-1の逆転勝利でモノにし、首位を射程圏内に捉えたかに見えたが、その後の8試合は3勝3分け2敗。浦和との勝ち点差をなかなか詰められないまま、ここまで来てしまった。

 はたして、残り7試合で首位との勝ち点差は8。現実的に考えて、川崎の逆転優勝は厳しくなった。大久保も「実際のところ、かなりキツい」と、自分たちが置かれた状況を認識している。

 だからといって、優勝を諦めたわけではない。最前線で川崎の攻撃を引っ張る背番号13は、「これから何が起こるかわからない。もう負けられないし、必死で上に食らいついていく。諦めたら絶対にダメ」と、あくまで視線を浦和の背中から外さない。大久保が続ける。

「(逆転優勝へのカギとなるのは)自分たちがやりたいことを、自信を持ってやれるかどうか。それができなければこのまま失速してしまうだろう。でも、フロンターレは絶対それができるチームだと思う。それをやり続けてきたからこそ、『フロンターレのサッカーは面白い』と言われるようになったんだから」

 人事を尽くして天命を待つ――。逆転優勝のためには、まずは見るものを魅了する川崎らしい痛快なパスサッカーを取り戻すことだ。それを残り7試合で貫き通せたとき、結果は自ずとついてくるはずである。

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