遠藤保仁が語る「新生ガンバ、逆転優勝への条件」

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 ブラジルW杯による中断前(第14節終了時点)、ガンバは16位(勝ち点15)とJ2自動降格圏内にいた。当時は、先制点を奪われると、チーム全体がナーバスになって、そのままズルズルと負けてしまう傾向にあった。それが、中断明け後は11勝1敗1分け(得点36、失点8)と圧倒的な強さを披露。今では鹿島戦のように、相手に先制されても落ち着いてプレイし、試合をひっくり返せるだけの粘り強さまで備わってきた。

 いったい、中断前と何が違うのか。遠藤はこう分析する。

「(今季は)開幕からしばらく、(FWの宇佐美)貴史が怪我でいなかったんで、前でボールが収まらなくて、なかなかコンパクトにサッカーができなかった。でもW杯後は、貴史の調子が上がってきて、7月に(新外国人FWの)パトリックが加入して攻撃のバリエーションが増えた。それが、大きいと思う。パトリックは献身的によく動くし、ボールも収められる。貴史とのコンビネーションも試合をこなすごとに良くなって、ふたりの関係で点が取れるようになってきた。あと、阿部(浩之)ちゃんとか、2列目の選手の調子がいいのも、大きいよね。

 守備も、最終ラインを含めて、最後まで集中力を切らさずに守れている。それに、(2ボランチの)オレとコンちゃん(今野泰幸)は、相手にできるだけバイタルエリアを使わせないような守備ができるようになったし、極力自分たちのところで相手のボールを奪ったり、相手の攻撃を遅らせたりして、後ろの守備の負担を少なくできている。攻守にバランスよく戦えているのが、今のガンバの強さじゃないかな」

 かつてガンバは、相手に1点、2点取られても、3点、4点奪って勝つという超攻撃的なサッカーを実践。2005年にはそのスタイルでリーグ戦を制した。それに比べて現在は、以前ほど攻撃の迫力はないものの、全体的に非常にバランスのいいサッカーを展開している。それは、守備が整備されたからに他ならない。少し前までは、どんな相手に対しても前からボールを奪いに行っていたが、最近は相手や試合の状況によって柔軟に対処。行くときは行くし、ブロックを作って守りを固めるときもある。それが、失点の減少につながっている。

 ゆえに、チームは大崩れすることがなく、攻守に安定したパフォーマンスを発揮できている。まさにガンバの新しいスタイルが構築されたのだ。

「まあ、もともと打ち合いでは負けるチームではないんで、これからさらに失点を減らしていければ、チームとしての安定感がもっと出てくる。それでも、ここ最近の自分たちの戦いには手応えを感じているし、簡単には崩れないチームになった。このガンバの新しいスタイルで、優勝できたらな、と思う」

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