ジュビロを激変させた指揮官・名波浩の「メッセージ」 (3ページ目)

  • 望月文夫●文 text by Mochizuki Fumio
  • photo by Nikkan sports

 名波監督の効果は、チームの人気回復にもつながったようだ。実際、クラブの営業担当者の顔もほころんでいた。

「得意先のスポンサーを訪ねると、真っ先に新監督の話題で盛り上がりました。ここのところ後ろ向きの話が多かったので、名波監督効果や、いい試合結果が営業的にも追い風になってくれると思います」

 名波監督は、チームの経営にまでプラス材料をもたらしたのだ。

 メディアの反応も変わった。J2の新監督会見としては異例の数の報道陣が集まった。その数は、約100人。チームが用意した会見場は、あっという間に記者やカメラマンで埋め尽くされた。

 その際、名波監督はこんなことを言った。

「自分の(ジュビロ)入団会見、引退会見、そして今日と、すべてに出向いてくれた記者の方がいて心強い」

 このひと言で、ベテラン記者たちのモチベーションは急上昇。各メディアが取り上げる頻度は、今後間違いなく右肩上がりとなるだろう。そこから生まれる波及効果も計り知れない。

 だが、名波監督は決して浮かれることはない。自力での自動昇格が確定していない今、その厳しい現実を直視して、一戦一戦、どう勝ち抜いていくのか、それだけを考えている。

 見事初陣を飾って、お祝いムードに沸く愛媛FC戦後の記者会見場でも、指揮官は強い口調でこう語った。

「まだ1勝しただけ。残りの試合も1試合たりとも負けたくない。このことは試合後、選手たちにもはっきりと言いました」

 ほんの数日で、ジュビロとそれを取り巻く環境を劇的に好転させた名波新監督。もはや絶望視されていたJ1自動昇格だが、彼ならば“奇跡”を起こしてしまうのではないか。そんな空気が強烈に漂い始めている。

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