小野伸二、35歳。「札幌でサッカーがまた楽しくなった」 (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sports Nippon/Getty Images

 一方で、まもなく35歳となる小野の、選手としての時間は徐々に少なくなってきている。

 小野をはじめ、1999年のワールドユース(現U-20W杯)で準優勝した面々は、『黄金世代』と称されて、その後の日本サッカー界を引っ張ってきた。小野同様、ガンバ大阪の遠藤保仁や鹿島アントラーズの小笠原満男らは、今なおチームの主力としてプレイしている。しかし近年、引退する選手も増えてきた。小野自身は、自らの今後についてどう考えているのだろうか。

「まだ、引退とかを考えたことはないです。できれば、カズさん(三浦知良・47歳/横浜FC)のように、いくつになってもサッカーをやっていきたい。もちろん、体が続かなければ、自分が思っていてもできないだろうし、自分が続けたいと思っても、クラブが必要としてくれなければ、続けるのは難しいけど、若いときよりも、もっとうまくなりたいとか、サッカーを楽しみたいとか、パスサッカーが好きだとか、サッカーに対する思いが強くなっている。オランダやドイツ、オーストラリアなど海外では、楽しむばかりではなかったし、パスサッカーができないことも多かった。それが、札幌に来て、パスサッカーに触れたとき、楽しいなって思った。自分の持ち味を生かせると思った。僕の中ではサッカーを楽しむことが一番なんです。もうすぐ35歳になるし、20歳の頃のように体は動かないけど、体が続く限りはずっと選手をやり続けていたいですね」

 小野が“永遠のサッカー選手”であることを望むのは、それ自体が彼の生涯の目標でもあるのだが、ある選手の生き方に刺激され、その影響を受けた部分もあるようだ。

「僕の2歳上に、深澤(仁博)くんという、かつて横浜マリノスやアルビレックス新潟に所属していた選手がいるんですけど、彼はその後、カナダをはじめ、タイとか香港とか、いろいろな国でプレイしていて、今もカンボジアのリーグで戦っている。彼は、どんな場所とか、カテゴリーや国とか関係なく、そこでプレイできるありがたみを感じながらやっている。僕も同じ気持ちというか、必要としてくれたクラブでプレイできることを常に感謝しながらやっていきたいし、どんな場所でも、どんな国でも、プレイする場があれば、ずっとサッカーをやり続けていきたいです」

 日本中が熱狂したフランスW杯から16年、日本サッカーの歴史を刻んだ1999年ワールドユースから15年の時が経過した。“天才”小野も早35歳になる。だが、ボールへの執着心と、サッカーを楽しむ姿勢は、当時と何ら変わっていない。

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