ドイツの「走るサッカー」はJでは10年前から当たり前 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 前回の南アフリカ大会を制したスペインがボールポゼッションを主体とした、どちらかと言えば"静"のサッカーだとしたら、今大会のドイツは"動"のサッカー。ドイツにしてもボールポゼッションには優れているが、そこに動的要素を加えることでサッカーをよりダイナミックなものに昇華させていた。

ブラジルW杯で優勝したドイツは、1試合あたりの走行距離が出場国中でもっとも長かった photo by JMPAブラジルW杯で優勝したドイツは、1試合あたりの走行距離が出場国中でもっとも長かった photo by JMPA しかし、だからと言って、これを今回のワールドカップで見えた新たなトレンドと言ってしまうのは適当ではない。ドイツにしてもチリにしても、「よく走る」は前回大会以前から見られた特徴だったからだ。

 それはJリーグについても言えることだ。

 今回のワールドカップでは、「よく走る」に加え、「3バック」、「マンツーマンディフェンス」、「カウンターアタック」といった要素を取り入れたチームが活躍したが、それはまさに、イビツァ・オシム監督時代の千葉が実践していたサッカーそのものである。

 スペースを空けないようにバランスよくゾーンディフェンスで守り、ボールポゼッションを高めて攻撃する。そんなスタイルが主流の現在では新鮮に映ったサッカーも、すでに10年ほど前のJリーグで見られていたものなのだ。サッカーの世界に新たなトレンドが生まれたわけでもなければ、これまでの常識が覆されたわけでもない。

 当の湘南を率いる曺貴裁(チョウ・キジェ)監督自身、自分たちが特別視されることに疑問を感じている。

「ドイツのすごいところはハードワークが当たり前になっていることだが、ハードワークが特筆されることのほうがおかしい」

 そう語る曺監督は「湘南は『よく走る』と言われているが、そう言われることが成長を止めるキーワードになってしまうかもしれない」とまで語る。

 なるほど、湘南の選手たちがいくら「ハードワーク=当たり前」と思っていても、周りが「湘南はよく走る」と特別扱いしてしまえば、「ハードワーク=無理にやらなくてもいいもの」にすり替わりかねない。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る