世界を体感した山口蛍の覚悟「Jでも個の力は伸ばせる」

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Getty Images

 自らに厳しさを課すことができるのは、意識が高いということである。Jリーグでプレイする中で、そうした意識の差を感じることはあるのだろうか。

「選手個々の意識の差は感じますね。でも、僕ひとりだけが高い意識を持ってやっていても、みんなからすれば、『あいつ、かんばってんなぁ』とか『ちょっと空回りしてんな』っていうふうにしか見えない。本当は全員が意識を高く持ってやれば、お互いに刺激し合って、すごくチームは成長すると思うんですけど、そこはまだまだな感じですね。だからといって、黙っていても何も変わらないので、今はまず、自分が戦う姿勢を見せていこうと思っています。そうすれば、周囲の選手も自然とやらないといけないと思うだろうし、そうしていきたいんで」

 W杯による中断期間に、セレッソは新たな指揮官としてマルコ・ペッツァイオリ新監督(ドイツ出身、イタリア国籍)を招聘した。だが、まだ戦術が機能するまでには至らず、J再開後、チームはいまだ勝ち星を挙げることができていない。山口はキャプテンとして、結果が出ていないことに責任も感じているし、チームメイトと高い意識を共有するにはどうしたらいいのか、悩みどころとなっているのかもしない。

 とはいえ、チームメイトには、山口の成長がまぶしく映っているようだ。ジュニアユース、ユース時代から山口の背中を追って、ともに2010年ロンドン五輪を戦ったMF扇原貴宏は、特に山口の進化を感じ取っていた。

「蛍くんは、W杯ですごく悔しい思いをしたと思うけど、自信をつけて戻ってきたように思います。サッカーに対する意識はもともと高かったけど、より高くなって、ひとつひとつのプレイにこだわっている。『オレが引っ張る』という意識も強くなったし、相当な責任感を持ってやっていますね。その姿を見ていると刺激になるし、僕もしっかりやらないといけないと思います」

 2018年ロシアW杯では、山口や扇原らロンドン組が中心になるだろう。そのためには、山口自身、ブラジルW杯後に語っていた「個人のレベルアップ」が必要となる。その選択肢のひとつとして、海外移籍がある。そしてW杯後、同僚であり、親友のFW柿谷曜一朗は戦いの場を欧州に移した(バーゼル/スイス)。山口は、Jリーグでも「個人のレベルアップ」は可能だと思っているのだろうか。

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