新潟躍進のカギを握るのはタイプの違う「5人のFW」 (3ページ目)

  • 大中祐二●文 text by Onaka Yuji photo by AFLO

 6月にブンデスリーガのホッフェンハイムに移籍した左サイドバックのキム・ジンスは、かつて、「堅碁の動きはすぐに分かる。迷わずゴール前に飛び込んでくれるから、クロスを合わせやすい」と話していた。しかし、今シーズンは押し込んだ分だけスペースがなくなり、相手DFがひしめくゴール前をいかにこじ開けるかが、チームのテーマとなっている。昨年はチームがゴール前の川又を探してくれたが、今は逆に、川又が変わりつつある新潟のサッカーの中で居場所を見つけなければならないのである。

 さらに、ここにきてクラブは5人目のFWとして、スペイン2部のバレンシア・メスタージャから195cmの大型ストライカー、指宿洋史を完全移籍で獲得。スペインリーグがオフ期間とあって、まずはコンディションを上げていく必要のある指宿が、すぐに試合に絡むことは難しそうだ。しかし柳下監督は、「スペインの2~3部でずっともまれて、物おじしないだろう。ゴール前では点を獲ること、さらに体格を生かしてボールをキープし、時間を作ることをしてもらいたい」と、他の4人のFWとは異なる特長を持つ新FWの今後を注視している。

 4番手の川又にとっては、正念場が続くだろう。だが、再開ダッシュの叶わなかったチーム状況は、追い風にもなり得る。カギを握るのは、蔚山(韓国)から期限付きで加入した左サイドバックのイ・ミョンジェだ。

 FC東京戦で初先発・フル出場を果たしたミョンジェの武器は、左足から繰り出される多彩なキック。「ボールを持ったときのプレイはジンス以上」と柳下監督も評価するミョンジェのピンポイントクロスと、相手DFが最も嫌がるところにためらうことなく飛び込んでいける川又の野性味が完璧にシンクロする――そんな近未来図も浮かんでくる。「試合のメンバーに入れるよう、練習からやっていくしかない」と話す川又が、今シーズンの新潟のサッカーで生かされる活路はそこにあるのではないだろうか。

 5人それぞれが強烈な個性を持つ新潟の日本人FWたち。リーグ再開後、中断期間中のトレーニングの成果が形としてなかなか表れない状況を打破するゴールを決めるのは、果たして誰か……。川又が主役の座を奪回するのか、それとも新エースが誕生するのか。いずれにせよ、彼らがゴールネットを揺さぶり、拳を突き上げるほど、チームは目標へと近づいていくことになる。

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