神戸躍進のカギを握る男が、中村俊輔から学んだこと (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki 松岡健三郎●撮影 photo by Matsuoka Kenzaburou

 日本特有の蒸し暑さのなか、38歳のマルキーニョス、34歳のシンプリシオが90分フル回転でプレイできなくなっているのも事実だ。特に中盤で絶大な存在感を示すシンプリシオの動きが鈍くなると、神戸の攻撃は停滞感を強めた。このままブラジル人トリオに頼るだけでは、たちまち順位は下がりかねない。

 そこでカギを握るのが、背番号10のMF森岡亮太である。

 安達監督が「両チームとも連戦と暑さで疲れがあり、どこで勝負するかの探り合いだった」と振り返ったように、ベテランが多い横浜FMにしてもそれほどチーム全員が動けていたわけではなかった。にもかかわらず、横浜FMのほうがより長い時間ボールを支配し、多くのチャンスを作り出せたのはなぜか。

 この試合の対戦相手、横浜FMの中村俊輔と森岡を比較すると分かりやすい。中村と実際に対戦した森岡は「あの人からリズムが生まれていた」と語り、こう続ける。

神戸の10番、森岡亮太(左)と横浜FMの10番、中村俊輔(中央)神戸の10番、森岡亮太(左)と横浜FMの10番、中村俊輔(中央)「(横浜FMは)サイドの崩し方にチームとしての形があって、自分たちはそれを止められなかった。それ(どのタイミングでサイドを使うか)はあの人の判断でやっているんだと思う。一緒にやってみて、スゴいなと感じた」

 率直に言って、同じシステム(4-2-3-1)同士の対戦にあって、ともにトップ下でプレイする背番号10の出来が両チームの差となって表れた。

 チーム全体の運動量が乏しいなか、下がってボールを受けると、確実にキープして時間を作り、前線へパスを送って攻撃を組み立てた中村に対し、森岡はワンタッチでさばくなど、ただただシンプルにプレイすることしかできなかった。

 森岡自身、「全然ボールに触れていなかった」と振り返り、うまくボールをさばいていたのではないかとの指摘にも、「言い方を変えれば、安全なプレイしかしていないということ」と自戒の言葉を返している。

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