W杯から戻った齋藤学が目指すもの。「仕掛けて崩す」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AFLOSPORTS

 齋藤は意気揚々とACLに挑んでいる。もっとも、そこは決して甘くはない戦場だった。グループリーグ4試合を終わって、マリノスは1勝2敗1分けと負け越し、苦戦していた。

「負けたらグループリーグ敗退」

 土俵際で挑んだ元アジア王者の全北現代戦だった。

 背番号11は、ようやくその実力の片鱗を見せている。タッチラインで受けた浮き球のパスを、そのまま右足ボレーでたたき込んだ。その一撃は、「無意識で蹴った」と本人は言うが、敵の度肝を抜いた。その後も、彼はGKとの1対1も冷静に決めて決定力を見せつけている。起死回生の2得点によって、チームは決勝トーナメント進出の望みをつなげたのだった。

 そしてグループリーグ最終節、齋藤は再びゴールを決めている。現アジア王者の広州恒大戦、絶対的アウエーの環境にも怯んでいない。右から中央にスライドしてシュートコースを探し、「相手ディフェンダーがサボった」と一瞬を見逃さず、左足でゴール隅にコントロールした。しかしながらチームは1-2で敗れ、勝利に導くことはできなかった。

「どれもこれも、意味のないゴールになっちゃいました」

 齋藤は悔しさを押し殺すように、さばさばとした口調だった。

「最終戦(広州戦)で負けてしまったのは、本当に悔しいです。先制されたゴール、クロスをブロックしようと飛び込んで、のばした足先にかすったんですけどね。リードされても、自分が1点取れば雰囲気を変えられる、と信じてやっていました。それで終了間際に1点取ったけど、残り時間はほとんどなくて。チームを勝たせることができなかった自分が情けない」

 彼は純粋に、レベルの高い戦いにその身を焦がし続けていたかったのだ。

「大きな舞台で強い相手と戦いたいですね」

 齋藤は小さな体に覇気を漲(みなぎ)らせて言う。

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