2014.07.23

W杯から戻った齋藤学が目指すもの。「仕掛けて崩す」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AFLOSPORTS

 まず、スケジュールの問題がある。Jリーグのシーズンは3月~12月。8月~翌年5月で行なわれる欧州リーグに途中で参戦することは、長い戦いを終えた後だけに、想像以上の肉体的負担となる。また、クラブにとって冬の補強は“緊急手当”になる場合が多く、チーム状態が悪い上、中長期のビジョンがない。否応なく即戦力になることを求められるも、プレシーズンを一緒に過ごせていないために連係面の不安がつきまとう。

 しかしシーズンが終盤にさしかかった頃、齋藤は迷い始めていた。

「リスクは高いのを承知でも、チャレンジしたい」

 その欲求が募っていった。その心境の変化を、齋藤はこう明かしている。

「“行ってダメならダメ”って開き直るわけではないけど、“チャレンジしたら何かは得られるはず”とも考えるようになりました。もちろん、成功するにこしたことはないけど、たとえ失敗して『早かったな』とか陰口を叩かれたとしても、自分はまだまだ上手くなりたいし、強くなりたい。海外でプレイすることで、日本では感じられない世界というものを、どうしても見てみたくなったんです。高い壁がそこにあるとしても、乗り越えていこうって」

 しかしそのたび、心はせめぎ合った。どんなに気持ちは高まっても、足首が不完全な状態であるのは厳然たる事実で、冬のオフは治療に当てる予定でいた。彼は1月末の移籍登録期限ぎりぎりまで迷うことになった。

「でも、車のハンドルを握っていたときにふと思ったんです。海外移籍するのは今回ではないなって」

 彼は心中を語る。

「想像してみたんですよ。海外から外国人の移籍選手がチームにやってくるとして、もし万全ではない選手が来たら、その選手をどうやって迎えるのか。“所属選手に対してリスペクトを欠いている”と受け止めるような気がしたんです。俺は選手だから、そこは間違いない。まずはケガを治して自分のプレイをし続ければ、海外への道は開けるという自信もありました。そして世界と言うことなら、アジアチャンピオンズリーグもありましたから」