W杯から戻った齋藤学が目指すもの。「仕掛けて崩す」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AFLOSPORTS

「自分はすぐに肉がついてしまうので、そこは気をつけていますね。ただ1シーズン、試合を戦うだけで体が大きくなっていくんですよ」

 齋藤はそう言いながら、〆の鴨せいろを美味そうにすすった。

 デザートの注文を巡り、友人である店員とふざける。十年来のつきあいで、この日もお世話になった地元クラブで午前練習に一緒に参加してきたという。子供たちは日本代表選手の登場に大はしゃぎだった。

「喜んでもらえると、自分にとっての励みにもなるから。笑顔の子供たちを見ると、もっと頑張らないとなって」

 齋藤は、周囲の応援してくれる気持ちが自分を突き動かしていることを弁(わきま)えている。それはしばしば自分が作り出す力以上だった。世界に挑む彼にとって、"燃料"が多すぎることはない。

 2014年は、彼にとって世界への想像力を働かせる年になったと言える。

 2013年10月、ドイツのブンデスリーガ、ボルフスブルグのコーチ兼スカウトであるピエール・リトバルスキーからは熱烈な誘いを受けた。

「左サイドをドリブルで崩せる人材が欲しい」

 それは光栄なオファーだったものの、当初は「W杯が終わるまでは、考えられない」という思いが強く、本気にはしていなかった。海外志向は強いのだが、懸案だった足首の治療もする必要に迫られていたし、冬の移籍はネガティブな点が多かったからだ。


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