ふたりの漫画家がW杯で目撃した「日本人らしい」サポーターとは? (3ページ目)


ヤマザキ
 たとえば、壮行会の会場に飾ってあった、日の丸に墨で選手の名前を書いてあるじゃないですか。あれがもう、第二次世界大戦中の何かみたいに見えて、私はけっこうビックリしました。日の丸の上に黒い墨で名前が書かれているけど、外国の人には読めないからなんだかわからない。「日本はいまだにカミカゼ精神なんだな」って思って見ている外国人もいたと思いますよ。

とり・みき どうなんでしょうね。単なる日本風の意匠と思って、マネしてる外国人もけっこういるような気が......。でも、シャレですんでいたものも、日本の国の体質がきな臭くなるとシャレですまなくなるかもしれないですね。

 あと、本当は持ち込んじゃいけないはずの拡声器が出てきた時も、ちょっと嫌だなと思った。拡声器は嫌いなんです。中東の応援じゃないんだから。

ヤマザキ 自分が応援していることをアピールしたい、というような、個人的自己主張というか、スポーツの応援というものとは何か別なものを感じますよね。

とり・みき はい。選手よりも自分が目立ちたいように思える......。拡声器というのはテクノロジーだから、それもちょっと嫌なんですよ。大声だったらまだいいけど。

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とり・みき マラカナンでベルギー×ロシア戦を観てきましたが、ベルギーは「元祖赤い悪魔」と呼ばれているくらいサポが熱いけど、応援は自然発生的なんだよね。それがすごく心地よかった。チャントもいくつか持ってるけど、そうめったやたらとは歌わない。

ヤマザキ 欧米では、その場に来て初めて、自然に統一感が出たりするものだから、サポーターのリーダーなんていないですね。なにせリーダーというものがキライだったり、リーダーがいても従わない気質の国が多いですから(笑)。

 組織に帰属したり、団結するのも苦手だから、壮行会もなければ、「まとまろう会」もない。今回の応援を見ていて、ああ、日本人ってやっぱり大勢でまとまるのが好きなのかな、と思いました。

とり・みき 応援「団」文化ですよ。そこにつまり、指導グループみたいなヒエラルキーができるんですよ。

ヤマザキ
 応援の指導グループの発生ですか? それはイタリアでもブラジルでもポルトガルでもちょっと考えられない事ですね......。

とり・みき ボランティアで、色々裏方で頑張っているスタッフもいて、そういう人達には頭が下がるし協力しようと思うんですが、「俺が応援をリードする」みたいなのにはあまりついていけない。

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