コートジボワール戦。大久保嘉人をワントップに推す理由 (3ページ目)

 恐れるものは何もない。チャレンジャーとして、自分の持てる力を存分に見せつけてやろうという気持ちが全身にみなぎっている。堂々としていて、自信も落ち着きもあって、ピッチでの輝きが違う。こういう選手の存在がチームの勢いにつながる。

 もちろん、若い柿谷と大迫への期待感も大きい。ただ、彼らには、最初はプレッシャーがかかりすぎないシーンでプレーさせたほうがいいのではないかと思う。初戦を先発でプレーすることは、相当な重圧を受ける。相手からのプレッシャー、メディアからのプレッシャー、自分が自分にかけるプレッシャー。そのときに、本田が言っていたように「自然体」でいられるかどうか。いろんなプレッシャーと向き合って、平常心でいられるかどうか。そして、平常心を保ち、自然体でいるためには、経験が大きくものを言う。

 また、大久保がワントップで先発すれば、前線の4人のうち本田、岡崎、大久保の3人がW杯出場経験のある選手になるので、初出場である香川の負担が少し軽減されるのではないかと思う。

 2シーズン前のヨーロッパリーグの決勝、アトレティコ・マドリード対アスレティック・ビルバオの取材で現地に行ったとき、シメオネ監督(アトレティコ・マドリード)は「キーになるのは平常心だ」と会見で言っていた。当時、アトレティコ・マドリードは2年続けてヨーロッパリーグ決勝に進出していた。

 対するビルバオは、ヨーロッパの大会の決勝進出はクラブ史上初のことで、サポーターもチームも選手も、経験がなかった。そのため、浮き足立ってしまって力を発揮できず、結果はアトレティコ・マドリードの優勝だった。アトレティコ・マドリードの選手が平常心で普段どおりにプレーできた要因は、その前年も決勝を戦った「経験」だ。そして、W杯でもそれは同じだろう。

 そういう意味で、大久保はW杯出場経験があり、ヨーロッパのクラブ(スペイン、ドイツ)でプレーしたこともある。オリンピックの舞台も経験している。その豊富な経験を、コートジボワール戦で存分に生かして、日本代表にいい流れをつくりだしてもらいたい。

プロフィール

  • 福田正博

    福田正博 (ふくだ・まさひろ)

    1966年12月27日生まれ。神奈川県出身。中央大学卒業後、1989年に三菱(現浦和レッズ)に入団。Jリーグスタート時から浦和の中心選手として活躍した「ミスター・レッズ」。1995年に50試合で32ゴールを挙げ、日本人初のJリーグ得点王。Jリーグ通算228試合、93得点。日本代表では、45試合で9ゴールを記録。2002年に現役引退後、解説者として各種メディアで活動。2008~10年は浦和のコーチも務めている。

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