福田正博が読み解くW杯でのザッケローニの戦略 (3ページ目)

 また、23人全員がW杯本番のピッチに立てるわけではない。どの国も、いいチームであればあるほど、あまり先発メンバーを変えない傾向がある。だからこそ、競争ということに関して、ベンチの選手は不平不満を持たずに、チームのまとまりを考えてふるまえるかどうかが重要になる。

 団結すると言葉で言うのは簡単だが、これはとても難しい。控えの選手は、不協和音を生まない、協調性のある選手でなくてはいけない。それがチームの秩序を保つことにつながる。ザッケローニ監督はそうした部分の選手のパーソナリティも見きわめて選考しているはずだ。

 また、メンバー発表の会見で「インテンシティ」という言葉が出ていたが、これは、相手を恐れないで、堂々と戦う姿勢を持つこと。ファイティングポーズをとって、勇気を持って踏み込んでいく。ひるまずに立ち向かう。それが「インテンシティ」ではないかと私は思っている。

 腰が引けた状態でパンチを出しても威力はない。相手を恐れたり、リスペクトしすぎることは避けなくてはいけない。その点、海外組は自分が所属するリーグでW杯に出場する外国人選手と日々対戦をしているので、相手の強さを知っている。そのため、相手を必要以上に恐れることはないし、相手の弱点も知っている。経験値があり、過信はなく、自信を持っている。

 そして、勇気を持ってラインを高くして守り、コンパクトさを保ってポゼッションをして、守備の時間を減らし、攻撃の時間を増やす。そうしたザッケローニ監督の哲学とでも言うべき姿勢が表れているメンバー選考になったと思う。

 大会本番前のトレーニングマッチは5月27日のキプロス戦、6月2日のコスタリカ戦、6日のザンビア戦。これについては、ザッケローニ監督は「強豪国とやる必要はない」という判断なのだろう。格上とやることで、メンタルとフィジカルのコンディションを崩すよりも、調整を最優先にして初戦に照準を合わせているのだと思う。本番までの日本代表チームの動向に注目したい。

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