福田正博が読み解くW杯でのザッケローニの戦略 (2ページ目)

 ボランチを5人にするかどうか悩んだと会見で言っていたのは、ケガから復帰したばかりの長谷部誠のコンディションの問題があったからだと思うが、長谷部の回復具合を見て、行けると判断した結果、4人になったのだと思う。

 4人のうち、長谷部、山口蛍はどちらかというと守備担当。遠藤保仁は攻撃担当。そしてあとひとりを、守備的な役割の細貝ではなく、青山にした。これは、守備的にならず、主導権を握って攻撃的なサッカーをするという監督から選手へのメッセージだと思う。もちろん、バランスを重視する監督なので、攻撃偏重にならずに、守備とのバランスを考えていることは言うまでもない。

 ケガから復帰した長谷部、吉田麻也、内田篤人のコンディションがどうかという懸念材料はあるが、この3人への監督の信頼の厚さと、これまで築き上げてきた実績を重視したということだろう。

 私は、前線の選手は調子のいい選手を選ぶべきと思っているが、後ろの部分、つまり守備の選手については、まとまりと連係、コレクティブに戦えることを重視すべきと考えている。同じメンバーで継続して戦うことで成熟度を上げて、組織で守る。今回の顔ぶれはそれを考えての選考になっている。

 長谷部は前回大会の経験があり、キャプテンとして守備に落ち着きと安定感をもたらす。内田は4年前の南アフリカ大会で試合に出場できなかった悔しさがあるはずで、モチベーションが高いだろう。守備については、ドイツで経験を積むことで、球際の強さも身についてきた。もともと備えている攻撃力も強化されている。吉田もプレミアリーグでの経験を生かせるはずだ。

 大会までに3人のコンディションを戻すためにも、不必要な競争、ポジション争いはいらない。監督がやるべきことは、選手に安心感を与えて、焦らずにコンディションを整えさせること。競争が激しくなると、個々の選手が監督にアピールするために早めにコンディションを上げすぎて、大会本番前にピークになってしまう危険性もある。

 競争がないことでマンネリになる危険性もあるが、その点、前線については大久保がいい刺激になっていると思う。大久保もまた前回大会の出場経験があり、さきほど言ったように、選手として、人間として成熟して、自分の気持ちをコントロールできるようになっているので、過度な競争にはならないはずだ。

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