J2長崎主将の佐藤由紀彦、「松田直樹は今もライバル」 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 松岡健三郎/アフロ●写真 photo by Matsuoka Kenzaburou/AFLO

 佐藤は2014年シーズンも、J2のV・ファーレン長崎を主将として牽引している。今年5月で38歳を迎え、チームには息子のような年齢の選手も増えてきた。しかし彼は選手としての老境を言い訳にしない。ライバルとの約束を守り、“格好をつけている”。

「この年になったら、走るメニューなんて何本もやりたくないですよ。でも、“文句を言うならタイムに入ってから”と俺は決めているんです。できないくせに愚痴るのは、すげぇ格好悪いから。先頭に立って走っていますよ」

 そう言って笑う佐藤の目元には、戦ってきた男のみが作れる皺(しわ)が浮かぶ。

「弔辞でも読みましたけど、自分はこれからも直樹を意識して生きていくと思うんです。そうすることで、あいつも生き続けるはず。直樹はプレイを通じて多くの人に愛され、サッカーを通じてたくさんの仲間を作りました。自分にとって、あいつはモチベーションそのものだったし、ライバルだった。いなくなってもこんなに考えちゃうんだから、まったく厄介な存在っすよ」

 佐藤は白い歯を見せた。現役生活に悪戦苦闘しながらも、やけに楽しそうに映る。格好いいか、格好悪いか。遠き日、ライバルとの再会で胸を張るために――。

※この原稿は、ジャンプSQにて小宮良之氏が連載しているコラム『1/11の風景』に加筆修正を施したものです。

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