J1鳥栖、優勝への覚悟。
「このチャンスを逃したら一生後悔する」

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki photo by Tsukida Jun/AFLO SPORT

 つまり、今季の鳥栖は得点力を増したことが勝ち切れない試合を減らし、2年前に比べて勝ち点7を上乗せすることにつながっているのである。

 そこでは当然、エースストライカーであるFW豊田陽平の存在が大きい。

 現在、7ゴールで得点ランク3位タイにつけていることからも分かるように、豊田自身の決定力が相手チームの脅威となっていることは言うまでもない。だが、それに加えて周囲に与える影響が大きいと、尹監督は言う。

「豊田への守備がかなり厳しくなってくる反面、2列目の選手にチャンスが巡ってくる」

 実際、前節の横浜FM戦では、MF金民友、FW池田圭と、豊田以外の選手が全ゴールを決めている。「そういう(2列目にチャンスが巡ってくる)形が何度もあったし、今日のゲームでは非常に重要なポイントになった」と指揮官。前半16分までに2点を奪った後は、自慢の堅守で相手の反撃を1点に抑えて逃げ切った。

 MF水沼宏太は「(2点リードの後)守りに入るのが早かったとは思うが、勝ててよかった」と振り返る、貴重な勝利である。

 一昨季の5位から昨季は12位へと大きく順位を下げたこともあり、今季開幕前の下馬評は決して高くなかった鳥栖。しかし、始まってみれば2年前をも上回る快進撃の予感を漂わせての首位に、尹監督は「多くの方々が信じ難いような状況なのかもしれないが、選手が努力を積み重ねてきた賜物」と誇らしげに語る。そして、こうも続けた。

「首位にいるからといって、これで停滞するのではなく、今後さらに続く1試合1試合に万全の準備をしていかなくてはならない」

 決して手綱を緩めることのない指揮官は、首位を守った横浜FM戦後の控室で、選手たちにこんな話をしたという。

「このチャンスを逃したら一生後悔する。必死に、このポジション(首位)を渡さずにやっていこう」

 目の前に優勝の二文字もちらつこうかという状況にも、選手たちがうかがわせるのは過信ではなく、確かな自信だけである。

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