これぞカルチョ。FC東京に浸透しつつあるイタリア人監督の戦術 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

「まだみんな考えながらやっている。(戦術が)大きく変わったわけでもないし、難しく考えすぎてもよくない。課題が出たことをポジティブに捉えたい」

 DF太田宏介はそう語っていたが、当時の状況を考えれば、開幕からの苦戦はある程度予想されたものだったと言ってもいいのだろう。

 だが、開幕から8試合を消化し、状況は明らかに好転し始めている。MF米本拓司は言う。

「監督の言っていることが頭に入りやすくなった。監督は相手の試合映像をたくさん見ているので、相手対策を立てた守備の要求がある。すごく緻密な監督で、そういうことは自分が知るなかでは今までの監督にはなかった。でも、それがようやくスムーズにできるようになってきた」

 誰が誰をマークし、どこでボールを奪いに行くのか。"カテナチオ"の国イタリア人監督らしく、特に守備面での要求は非常に細かく、当初は戸惑いもあった選手たちだったが、ようやく新監督のやり方にも慣れてきた。その結果が、今季リーグ戦8試合目にして初の無失点である。

 守備戦術の浸透は、攻撃面でも戦術的な幅を広げる。フィッカデンティ監督が語る。

「前半は両チームともコンパクトにプレイしたが、その後、スペースが生まれたときにしっかりと攻撃ができ、1点目が生まれた」

 そこでカギとなったのが、ルーキーFWの武藤嘉紀である。指揮官が続ける。

「戦術意図によってメンバーを決めている。武藤はスペースがあると生きる」

 57分に途中出場した武藤は、主に左サイドに生じたスペースを有効活用。持ち前のスピードを生かして、試合を動かした。

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