勢力図に変化あり。今季ACLのトレンドを読み解く (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 オーストラリア勢が決勝トーナメントに進出するのは、これが初めてではないが、出場3クラブがいずれも健闘し、最後の最後まで上位進出を争った例は過去にない。もはや日韓両国のクラブにとっても、勝ち点を計算できる相手ではなくなっている。

「我々は予算の少ない小さなクラブで選手層も薄い。普段は対戦できないフロンターレのようないいチームと、すばらしい試合ができたことは自信になる」

 川崎との試合後、ウエスタンシドニーのトニー・ポポビッチ監督は謙虚な言葉を並べていたが、実際のところ、川崎との対戦成績は1勝1敗。他の日本勢とオーストラリア勢の対戦成績をすべて合わせても3勝3敗の五分で、数字のうえでは両者の力にまったく差はなかった。

 オーストラリア勢の着実な進歩をうかがわせたのは、単に成績だけではない。以前のオーストラリア勢と言えば、サイズとパワーを生かしたロングボール多用のサッカーが主だったが、そんな特徴は過去のものだ。

 現在のオーストラリア勢は、どのクラブもしっかりとパスをつないで攻撃を組み立てることができており、長身FW目がけてロングボールをひたすら蹴り込むだけのサッカーは、まったくと言っていいほどお目にかかれない。むしろ負けている試合での終盤くらいは、もっとパワープレーに徹してもいいのではないかと、こちらが余計な世話を焼きたくなるほどだった。

 もちろん、セットプレイの場面では高さが大きな武器になっているが、それだけに依存した前時代的なサッカーは、少なくともACLに出場するクラブに関して言えば、もはや完全に淘汰されたと言ってもいい。

 稀代のテクニシャン小野伸二を擁するウエスタンシドニーは、まさにその代表格。これまでのオーストラリア勢とはひと味違ったサッカーで日中韓の3クラブを出し抜き、見事に首位通過を果たしてみせた。

 東アジア地区の4グループから決勝トーナメントに進出したクラブの国別内訳は、日本3、韓国3、中国1、オーストラリア1。この数字だけを見れば、依然日韓2強状態が続いているようにも見えるが、そこに至る過程には明らかな変化がうかがえた。

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