グランパス、復権へ。西野新監督が仕掛けた攻守の「新味」

  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 そんな西野監督が今季、グランパスで最初に取り掛かったのは、守備のようだ。2002年から監督を務めていたガンバ大阪では、遠藤保仁を中心とした攻撃に重点を置いてチームを作っていったが、チーム状況や人材を見渡してみて、グランパスでは守りから作り上げていったほうがいいと判断したのだろう。

 そしてレイソル戦では、西野監督自身「今、整備しているところが、少しずつ形になっている」と語ったように、狙いとするディフェンスが、だいぶチームに浸透し始めているように見えた。それは何かというと、中盤の組織的な守備であったり、レイソルを圧倒したルーズボールへの素早いアプローチであったり、最終ラインのラインコントロールといったところ。それぞれ、1戦目、2戦目、そして3戦目と上積みがあって、この日も素晴らしい出来でレイソルを完封した。

 闘莉王を除けば、最終ラインは皆、若い選手ばかり。それでも、センターバックの大武峻(21歳)はよく声を出して奮闘し、両サイドバックの本多勇喜(23歳)と田鍋陵太(20歳)も、攻守でアグレッシブな動きを見せていた。

 加えて、ボランチのダニルソンも、来日当初よりもボール奪取力が増して、コンビを組む22歳の磯村亮太も、意外に反応がよかった。ルーズボールをかなり拾って攻守に貢献していた。

 さすがに今季は、西野監督も「優勝する」とは大きな声では言えないだろうが、若い選手たちがこうして結果を出すことで自信をつけて、今シーズンで思い描いた守備の形を築くことができれば、来季は優勝という目標も現実的になってくるのではないだろうか。

 攻撃では、奪ったボールをいかに玉田やケネディに当てて、前線でポイントを作っていくかが重要になる。そのうえで、2列目の小川佳純や枝村、そして矢野らが、どれだけ相手の背後を突けるかどうか。レイソル戦でも、そこまで持っていくシーンはまだまだ少なかったけれども、ボールを奪うまで、ボールを奪ってから前線につなぐまでの、チームとしての作業はよくできていた。

 こうしてみると、グランパスも十分に上位を争えるチームと言えそうだが、そのために必要なことは、主力選手がケガをしないこと。ケネディや玉田、そして闘莉王に、ダニルソンなど、例年グランパスは、年間を通して安定した力を発揮できる選手がケガをして戦列を離れることが多い。そういう選手たちがひとり欠け、ふたり欠けていくと、いくら何でも若さという勢いだけではカバーし切れない。どうしてもチームのパフォーマンスが落ちてしまって、取りこぼしをするはめになる。

 西野監督になって、選手たちのコンディショニングも高まればいいが、はたしてどうなるか。昨年の横浜F・マリノスのように、ベテランのキーマンたちがシーズンを通して活躍し続けることを期待したい。

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