ACLまで勝ち点5。アジアトップレベルを目指す新潟の本気度 (3ページ目)

  • 大中祐二●文 text by Onaka Yuji photo by AFLO

 柳下監督がチーム目標として「ACL圏内」を明言したことは、選手に大きな刺激となっている。昨年より厳しくなるであろう相手からのマークに屈することなく、今シーズンもチームを牽引していくことが期待される川又は、「逆に責任感が出てくる。去年ある程度、自分たちはできたけれど、それはもう終わったこと」と表情を引き締め、持ち前の負けん気をむき出しにしていた。

「サッカーは、試合に勝ったもんが一番強い。だから、試合では勝つことだけを意識する。だけど練習は、逆に内容が一番大事。プロの世界で勝つことの重みをみんなで感じながら、サポーターも含めてスタジアム全体がひとつになる新潟らしい空気を作り出して、敵に、『何や、このスタジアムは』と思わせることができれば、おそらくACLをつかめる」(川又)

 愛媛FC、湘南ベルマーレへの期限付き移籍を経て、2年半ぶりに新潟に復帰した大野は、チームの雰囲気が激変していることに驚いている。「練習でこれほどピリピリしているとは。(期限付き移籍に)行く前と後とで、まるで違う」。

 高知キャンプ中のファジアーノ岡山ネクストとの練習試合で、こんな一幕があった。ボールを下げるばかりで、まったく前に仕掛ける気配のない右サイドバックの川口尚紀を、ボランチの成岡翔がものすごい剣幕で叱責したのだ。

 プロ2年目の川口は、新潟のユース出身。ルーキーイヤーの昨シーズン途中に定位置をつかみ、今年1月に行なわれたAFC U-22選手権に出場したU-21日本代表でもある期待の若手だが、昨シーズン終盤はプレイに積極性が失われ、三門に先発の座を譲っている。

 今シーズン、チームは大分トリニータから右サイドバックの松原健を期限付き移籍で獲得した。U-21日本代表におけるライバルでもある松原との競争を通して、川口の奮起と成長をチームが願っているのは明白だ。それにもかかわらず、川口がいっこうにピリッとしないことに対してプロ12年目の成岡が見せた怒りは、求めるサッカーのレベル、質が昨年よりも確実に上がっていることを感じさせる。

「今年の目標は、1年間チームとして安定した力を出すこと。勢いが出れば、どんなチームにも新潟を止められないということは、去年の終盤に示すことができた。今年はその勢いを、第1節から最終節まで出し続ける。そういうチームが、『優勝』できるチーム」

 成岡は「優勝」の2文字を、ためらうことなく口にする。

 J1で11年目のシーズンを戦う雪国のクラブは、本気だ――。

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