3連覇という偉業達成へ。サンフレッチェに「秘策」あり (2ページ目)

  • 飯尾篤史●文 text by Iio Atsushi
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

「他クラブは着々とJ1同士の練習試合をしているけど、うちにはその機会がない。だから、一日一日をより大事に過ごさなければならないと思う」

 佐藤寿人は、そう言って気を引き締めていた。だが、そこに焦りや不安を感じさせなかったのは、すでに揺るぎないベースが確立されているからだろう。

 2月13日の富山との練習試合でも、主力組同士が戦った1、2本目の90分間を2-0で勝利。選手個々のクオリティーはもちろん、完成度の高さにおいても差は歴然だった。

「昨年までやってきたことを確認しながら、そのクオリティーを上げていきたいと考えています」

 この時期の狙いをそう明かしたのは、森保監督だ。下田GKコーチに指導を任せていたのも、すでにあるベースをさらに強固なものにするためのトライだという。

「(GK西川周作が移籍し)今シーズンはGKに林卓人(ベガルタ仙台→)が新たに加わりましたし、GKとディフェンスラインの連係をどうするかというのは、守備を安定させるために必要なこと。だから、事前に打ち合わせして、議論したうえで、下田コーチにGK目線で指導してもらったんです」

 また、このキャンプでの守備練習では、ディフェンスラインの押し上げも確認されている。

 昨季、広島が喫した失点数は29。これはリーグ最少失点だった。しかしその一方で、失ったものもある。得点数だ。初優勝した2012年は、63得点(失点34)だったが、昨季は51得点。一概に比べられるものではないが、佐藤にはチャンスの数自体が少なくなった印象があるという。

「昨季の、特に終盤、チャンスが少なくて、自分が囮(おとり)になる機会が多かった。その理由を考えると、ディフェンスラインの位置が2012年シーズンと比べて低かったからじゃないか、と。しっかり守れていたけど、ボールを奪った位置から相手ゴールまでの距離が長くて、攻め込めなかった。僕個人のゴールを見ても、エリア外からのものが多かったんですね。だから、今季はラインを上げて、高い位置でボールを奪って攻めることにトライしなければいけない。得点力を上げないと、昨季よりも厳しい戦いになることは明白ですから」

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