川崎F・中村憲剛が奪還を誓う「2007年の忘れ物」 (2ページ目)

  • 飯尾篤史●文 text by Iio Atsushi
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 中村の言う「成熟」――それは、指揮官の目指すスタイルが浸透し、主力が定着したことを意味している。

 川崎Fはここ数年、監督や主力選手の入れ代わりが激しく、キャンプでは戦術の落とし込みや、メンバーの見極めに時間が費やされることが多かった。

 例えば昨季は、FW大久保嘉人やMFの森谷賢太郎、山本真希ら新戦力の見極めと、それにともなうシステムの構築に時間がかかり、「大久保の1トップ」という形に落ち着いたのは4月に入ってから。中村のコンディション不良もあったが、システムやメンバーが定まらなかったことが、序盤のつまずきにつながった。

 しかし今季は違う。ここまで徳島ヴォルティス(J1)、ヴィッセル神戸(J1)、ファジアーノ岡山(J2)との練習試合をこなしてきたが、主力組として出場するメンバーは、4-2-3-1の布陣でほぼ固定されている。風間監督のスタイルをすでに自分のモノとし、3位を勝ち取った昨季終盤のレギュラーたちが、さらに連係に磨きをかけ、自分の技術を高めている。

 もう一方のサブチームでは、ACLを見据えて補強したFW森島康仁(大分トリニータ)、DF武岡優斗(横浜FC)、MF金久保順(アビスパ福岡)といった新戦力や、MF谷口彰悟(筑波大)、MF可児壮隆(阪南大)といったルーキーが風間監督のスタイル習得に励み、センターバックにコンバートされた稲本潤一が新ポジションにトライ。DFの小宮山尊信、中澤聡太、實藤友紀、森谷といった主力組でもおかしくない選手たちが、レギュラー奪還に燃えている。

 もっとも、主力組の顔ぶれが、昨季からまったく変わらないわけではない。数少ない変化を与えているのは、栃木SCからやって来たボランチのパウリーニョだ。2月12日に行なわれた岡山との練習試合では主力組に入り、タイミングの良い縦パスや深いタックルなどで、その実力の片鱗を見せていた。

 風間監督のスタイルに完全にフィットするには時間が必要で、ポジショニングやサポート、判断のスピードなどに改善の余地を残しているのは確かだが、中村も「(昨季レギュラーの山本)真希だって、慣れるのに時間がかかったから、心配はしていない。攻守のバランスが取れた好選手。必ず力になってくれると思う」と期待を寄せる。

 翻(ひるがえ)って、前線では右サイドハーフを務めるFW小林悠の好調さが目につく。裏を狙うだけでなく、組み立てにかかわり、サイドバックの攻撃参加をうながし、守備での献身も失わない。サイドから中央に潜り込む術も完全に自分のモノにしたようで、岡山との練習試合でも左サイドバック登里享平からのクロスを頭で合わせてゴールを決めている。

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