小笠原満男の後継者。鹿島・柴崎岳に芽生えた「エースの自覚」 (3ページ目)

  • 佐藤克彦●文 text by Katsuhiko Sato
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 柴崎が語る。

「もっと自分の好きなようにプレイすればいい、と言われることが増えてきましたね(笑)。確かにそれは、一理あるかもしれない。でも、自分が目指しているボランチというか、理想とするプレイヤー像には近づいていると思う。前に言ったことがあるけど、『あいつがいるチームが勝つ』みたいなね。それに今季は、自分たち(若い選手)が中心になって、チームを引っ張っていくシーズンだと思っている。昨季のような悲しみ(最終節で敗れて5位)を、もうサポーターのみなさんに与えないようにしたい」

 天皇杯は4回戦で早々に敗退。このオフは例年以上に長かったが、柴崎はその間、青森県発起人として名を連ねる『東北人魂(※)』の主なイベントすべてに参加した。多くの子どもたちと積極的に触れ合い、精力的にチャリティー活動をこなした。数年前まで先輩たちの後ろで隠れるように行動していた“ひ弱な少年”の姿は、そこにはなかった。堂々として、眩いばかりのオーラを発していた。

※震災後、東北地方のサッカー復興のために、東北六県出身のJリーガーを募って発足した任意団体『東北人魂を持つJ選手の会』の通称。

 今季の目標を問うと、柴崎は静かに、しかし力強くこう言った。

「三冠(リーグ、カップ、天皇杯)を狙える立場にいるのだから、すべてのタイトルを獲りにいく」

『東北人魂』の活動でも、キャンプでの取り組みに置いても、これまでと違う一面を垣間見せた柴崎。今季、飛躍する予感はある。それが、小笠原の期待以上であることを望みたい。

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